この感情を言葉知らぬわけでもあるまいに、心が時折、暴走を見せる。
・・・・・・・・
ごめんなさい。
痛いのです。
あなたへの、
その思いを、音という形にすることが
FOR GOT REA
L
「不二がほぅけてる・・・」
意外そうだとも、異様そうだとも受け取れる呟きは、不二の親友の猫から発せられた。
実際、異質なのに間違いはない。
「天災」不二周助に、放心状態などに合わない。
魂飛ばして九州行っているって言うんなら別問題だが。
「・・・・・・・・・・・重症だにゃぁ」
猫が再びぼやいた。
そうだな、と部長代理がうなづいた。
そういえば副部長が部長代理になってしまったから、今福部長はいないはずで、だから副部長代理は誰なんだろう?といらないことを考えて、苦笑いする。
「あれ?」
「どうしたの?」
上げた声に対する問いには答えなかった。
気になるものがあると一直線になるのは昔からの癖で、だから・・・気がついたのと足が動いたのは殆ど同時。
「不二」
「なに?」
ほうけている彼に声がかけられる度胸への関心なのか、妙な目線が背中に刺さる。痛い。
だが気にかけているのは、ちゃんと自分の目線の先にあるものだった。
物、というのは間違っているかもしれない。
それは・・・・・・消えはしても、決してはずれはしない。
「・・・・・・エンゲージリング?」
「に、見える?」
「もともと指輪って言うのは隷属のために存在しているんだって知ってるか?」
ほんの少しからかって言うと、上の空だった奴の目にいつもの一種危険な色が宿った。
「へぇ」
知っていたのかいないのか、わざとらしいほどの声が耳に残る。
気の弱い人間だったら無意識に、突然謝っていたかもしれない。
それ位、重い声。あいにく通用しなくてすむけど。
「痛々しいって言うか、なんていうか。あいつにも独占欲って奴があったんだな」
「違うよ。これは僕のわがまま」
「・・・?」
「あの人以外に、所有物なんて、真っ平だね」
それは惚気ているのか?と聞いたら、そうかもしれないね、と意味深に笑われる。
言われるまで、そうやって自分を「ここ」に縛り付けるものがあったことを覚えてすらいなかった人間とは、思えないほど、自然に。
「愛してるとかそういうんじゃないだろ?」
「当たり前でしょう?そんなつまらない、出来合いに言葉で僕らの関係は表せない」
確かに。
それはこの部の、どの組み合わせにもいえることかもしれないけれど。
「でも」
「思いを込めた傷が、癒されないって言葉にすがり付いてみたいんだよ」
そういって。
アメジストの色合いを持つ左手の薬指を掲げて、不二は淫蕩な笑みでその付け根に口付けた。
歯形で出来た痣は、多分
続く空のずっと先にいる、あの男への愛しさをつのらせるではなく
この地で、あの男を憎むことを選んでいるようにも
映ったのは気のせいではないだろう。
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いいわけ
手塚単身赴任です。
なんか白いんだか黒いんだかわかんない不二・・・
名前出てきたの、彼だけだって気づきました?
因みに語り手は、多分乾・・・のはず。
初出典:HPBBS気まぐれ更新
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