織姫と彦星は遊び呆けて別れさせられた
ジゼルは身分違いの恋人に気が触れて
祖母との思い出の靴で葬儀に臨んだ女の子は咎人になった

何があってて間違ってるのか
わからないから人間関係はあまり好きじゃなかった筈なのに



|||||Secret Rule・・・ Side S.INUI|||||


「先輩って見られてるよか絶対わがままっすよね」
「・・・・・どーゆーことかな?桃」

思ったよりも早く終わったHR.
暇つぶしに立ち寄った図書館であったのは意外すぎる後輩。
授業以外で図書館に立ち入る確率なんてものすごい低い筈なのに。
素直に言ったら「先輩の予想外すのって案外たのしいっすね」と不快というより不可解な言葉を貰うことに。
それから他愛もない話をしていて、不意に。

零れたのは、意味の捉えにくいことば。

「先輩って自分から告白する気ないっしょ?」
手塚に言わせるところの青学一の曲者は他人の恋愛事情の何処に興味があるのか俄然はりきったような興味を見せた。
自分の方でいっぱいいっぱいのくせに。
逆に興味がわいてきて、この茶番のような応酬に暫く付き合うことにする。
「ないね」
「っすよね。でも、相手あの海堂っすよ?」
まってたら、じーさんになっちゃいません?
「勿論、卒業までに告白させる手筈は万全だよ?」
「うわ。自信家っすね〜」
「自信?とんでもない」

罠を張るのは彼だけの専売特許じゃない。

「・・・?先輩。何か言いました?」
なんでもないよ、と自分の無意識の発言を都合のいい眼鏡(フィルター)に隠してしまう。
畳み掛けるようにトレーニングのことに話題を転じてしまえばもう追ってこれない。
多分、気になっているだろうけどね。
でもまぁとりあえず。

あの生意気な王子様は俺の「特別」と同じ戦法じゃぁ落とせる確立はかなり低いよ、桃城君。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イヴは蛇に唆されて原罪を背負う果実に歯を立てた
赤頭巾は唆されて花畑に寄り道して
ラプンツェルの両親は欲望に負けて娘を差し出す羽目に

かき乱されるこの感情に流されればきっと果てにあるのは罪だと知っているけれど





Secret Rule ・・・SideK.KAIDOU

「兄さん?ちょっといいですか?」
弟の声がドア越しに聞こえて、ノートにペンを走らせる手を止める。
許可の言葉を唇に載せると控えめながら確かに、思った通りの人物が部屋に滑り込んできた。
「どうした?葉末」
「あ、はい。ちょっと教えていただきたくて・・・」
すまなさそうに差し出されるノートと、記憶にある随分とかわいらしい表紙の教科書。
「すぅ・・・算数か?」
つい2年前まで使っていた筈の言葉に言い直すだけで、随分自分が時間という奴に流されてきたこをそ自覚しながら、なれない笑顔で手を伸ばす。
ほっとしたような顔で頼ってくる弟を見ると、時々、自分とダブって、少し照れくさい。
そっくりだと昔からいわれる、この弟のように、自分もあの人に対して無防備なのだろうかと・・・
「兄さん?」
「あ、いや、すまん。ちょっと考えてて・・・」
「兄さんが考え事なんて珍しいですね」
いつもは考えるよりも先に行動する人なのに。
お前兄を何だと思っているんだ。
脱力して苦笑いを零すと悪戯っ子の目で笑い返してくる。
「俺だって、いきなり行動するのを躊躇う時があるさ・・・」
「それは・・・」
独り言のつもりで零した筈の言葉を、拾われて少し驚いた。
弟を見ると、真剣な顔で問い掛けてきた。
「乾先輩さんのことですか?」
「へ?」
あまりにもあっさり告げられた言葉は酷く予想外で、こんなの件の先輩だって予想するはずもない。
「でしょう?」
「・・・・・・・・って。お前一体・・・」
何でそんな話になるんだ?
問い掛けたいのに言葉は形にならなくて頭を抱えると、時々自分よりもしっかりしていると思わされる弟は当たり前のように自分の分である筈の言葉を攫っていく。
「兄さんは分かりやすいです。乾先輩のことを話している時だけ、凄く楽しそうなんですから」
「・・・・・・・・・・・・悪かったな」
正確に言うなら、自分はテニスの話題が多い。その中で、どうしたって自分のテニスにはダブルスのパートナーとしての、トレーナーとしての彼が話題の中心になってしまう。
それだけのことなのだ、と言ってしまえばいいのに、どうしても。

自分の気持ちが、それを流せなくて、なんて。
弟に理解されているのが情け無い。

「言わないんですか?」
「いわねぇよ」
「男同士とか、あまり気にしないんですが」

そんな事を言われても困るのに。
理解の深い弟にふと両親はどうなんだろうという疑問が湧かないわけではないのだけれど。
聞く度胸もないのでそのまま流して。
本音かどうかも自分では分からないまま、こんな言葉を滑らせた。

「あいつから言わせないと、負けって気がするじゃねぇか」

兄さんらしいですね。
返って来る言葉が、くすぐったくて首をすくめた。
だって分かっているんだ。
こんな強がりはあいつの計算内だってこと。
そして。
多分

もう自分は、とっくの昔に罠にかかっていて。
後はきっかけ一つで、この決意を壊してしまうんだって言うこと。
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