+++PHOT STAND+++




Side INUI


彼の部屋に行く度に気になる、机の上の伏せられたフォトスタンド。
木製のそれは酷く落ち着いたつくりをしていて、彼の部屋にしっくりと馴染んでいた。
だから何度か来るまで気付かなかったのだけど。
気がついたら人間気になるもので。
勿論、勝手に見ることは憚られるのだけれど。
一度だけ、気になる、といって見せたら、顔を真っ赤にして拳が一発。 それ以来、ちょっとしたタブーになっていた、それ。
必ず部屋に入る前には「ちょっとだけ」待たされて、そして許可を貰ってから入っていた。
写真立て一つ、倒すだけだからそんな時間はかからないのだけど。
ま、夫婦って言うのは一つ二つ秘密があるほうが上手く行くって話しだし。
統計上。 なんてのんびり考えながら、この前の全米のビデオを持って足取り軽く海堂宅へ。
いつも大体海堂自身が迎えてくれるのだけれど、今日に限ってホヅミさんが迎えてくれた。
「かおるね、もしかしたら少しうたた寝してるかもしれないわ。乾さん、部屋はいってから、もぅ叩き起こしてしまっていいからね」
「あ、はい」
珍しいこともあるもんだ、と促されるままに巧みな話術で(自称)丸め込ませていただいたお義母さん(そういやこれを連呼したら殴られたなぁ。ニュアンスで漢字の意味合いを分かったらしいけど・・・流石だよ、海堂。以心伝心だな!)の許可を貰って二階、海堂の部屋へ。
慣れた通りにドアを押し当てると、視界的には無防備な机が先に目にとまった。
海堂らしく整理された机の上には木製のフォトスタンド。
そこに治められた写真を見て、不覚にも顔を染めて・・・で、何時も自分が見ている通りに倒しておいた。
それから、奥の畳の間で布団も敷かずに眠りに落ちているお姫様の脇に座り、思わずその頬に唇を寄せた。
高貴な百合の花が開くように、やがて目覚める、その強い輝きを宿らせた瞳が驚きの色を宿すまでそう時間はかからない。
「っ、せんぱっ・・・俺・・・」
「疲れてた?起こしちゃってごめんね、お姫様」
「誰が姫ですか・・・」
うめくように言った海堂は、上目使いに此方を睨んできた。
てっきり手が出ると、経験上高い数字で読んでいて身を固めていたのに。
ただ海堂の注意は微妙に此方から外れていた。
向かう先には・・・あぁ、なるほど。
倒れたフォトスタンドを見て、あからさまなまでのほっとした、気配。
これじゃぁ、期待に応えないと、だな。
「で?今の俺と1年前の俺、どっちが海堂の好みなのかなぁ?」
「!あんた見て…」
「そりゃみえるでしょ」
入ったらすぐ、なんだから。
部屋の掃除を自主的にやっているので、海堂の部屋には殆ど家族が入ることはない。
だから全然問題はないのかも知れないが、たかだか「先輩」立場の人間の、隠し撮りショット(多分写真部からの横流し品。チェックした中に見たことがあるカットだったので)をしっかり飾ってある息子を見て、向こうがどんな感想を残すことか。
・・・いまんとこそんな危惧はなさそうだけど。
何にもいわれてないし。
「で?」
「あんたの写真・・・あれしか持ってないから・・・」
ボソッと返された、本当に小さな声。 此方の方がドキドキしそうだ。
そんな可愛いこといわれた日には。
「何処で手に入れたの?」
「・・・不二先輩がいきなりくれました」
あ。今別の意味でドキドキしてきた。
・・・侮れねぇな、不二周助・・・
「先輩?」
「裏になんか書いてあったりした?」
「いえ・・・?」
これ以上何か聞いても妖しいだけだと思うので。
まぁこれ以上は何も言わないけれど。
「かいど。今度一緒に写真とろうか?2人きりで、さ」
「…はい」
君がそれを約束してくれたから、今日はそれで善しとしておこう。
ついでに奪えた、キスと一緒に。



Side KAIDO

何時もは勿論目の前だけれど、机に伏せたフォトスタンド。
木製のそれは男の部屋であってもあまり浮かなくて、俺の部屋の一部になっていた。
それでもそう簡単には他人に見せるわけには行かなくて。
ただ、伏せられている、ということが人によっては興味になるということをつくづく知った。
勿論、勝手に見るような相手じゃないのだけれど。
一度だけ、気になる、といわれて、反射的に照れが拳を動かしていた。
それ以来、ちょっとしたタブーになっていた、それ。
必ず部屋に入る前に
「ちょっとだけ」
待たして、そしてスタンドを倒してどうぞと声をか けて。
写真立て一つ、倒すだけだからそんな時間はかからないのだけど。
絶対見られたくなかったから。
こんな女々しい自分の甘えを、あの人に知られたくはなく て。
でもその日。
何故かどうしても眠くて、あの人が来るってわかってたのに、俺は何時の間 にか睡魔の戯れにつき合わされた。
母さんの声が遠い。
そういえばあの人、うちの母さんなのに妙に「おかあさんおかあさ ん」ていうから・・・
で、なんとなくその当て字が「お義母さん」のニュアンスだと気付 いて、一度思いっきり殴ったっけ。
あの人の発想は、ああいうところが付いていけない。
あぁ、先輩はいって来たんだなぁ、と動かない身体の、妙に冴えてる頭の片隅が感じていた。
あれ?たおしたっけ?俺の・・・
ぼんやり思っていたら、頬に甘い花弁が落ちたような錯覚をした。
キス、されてる。と思ったら、金縛りから解放さたように一気に目が冴えた。
開いた目が映すのは、かなり胡散臭いくせに、ものすごく、惚れてしまったあの人の笑み。
「っ、せんぱっ・・・俺・・・」
「疲れてた?起こしちゃってごめんね、お姫様」
「誰が姫ですか・・・」
うめくように言うと、向こうはちょっと身構えたのが分かった。
確かに何時もの俺なら手が出ている状況だ。
だが、それより今気になっていることが一 つ。 …よかった。たおれてる。
フォトスタンド。あの人の、凄く綺麗なサーブの瞬間。
そこに映る目は、俺が勝手に憧れていた、でも、実は成就していた片思いの相手。
「で?今の俺と1年前の俺、どっちが海堂の好みなのかなぁ?」
「!あんた見て…」
「そりゃみえるでしょ」
入ったらすぐ、なんだから。
部屋の掃除を自主的にやっているので、おれの部屋には殆ど家族が入ることはない。
だから全然問題はないし・・・いまんとこそんな危惧はなさそうだけど。
何にもいわれて ないし。
だけど、だけど。
一番見つかりたくない人に見つかってれば世話がない!
「で?」
「あんたの写真・・・あれしか持ってないから・・・」
ボソッと返した、本当に小さな声。
ドキドキしっぱなしだ。
何でこんなこと、白状しなきゃならない?
「何処で手に入れたの?」
「・・・不二先輩がいきなりくれました」
あ。今思えば何で?って・・・黙ってた筈なんだけど・・・ ・・・
侮れねぇな、不二周助・・・
先輩の反応がなくて、急に不安になった。
声をかけると、困った顔をされた。
「先輩?」
「裏になんか書いてあったりした?」
「いえ・・・?」
一体何を聞かれたんだ?
とか思ったけれど。 まぁこれ以上は何も言わないけれど。
「かいど。今度一緒に写真とろうか?2人きりで、さ」
「…はい」
あなたがそれを約束してくれたから、今日はそれで善しとしておこう。
ついでにくれた、キスと一緒に。


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