ティンカーベルは小さいから
一度にひとつの心しか宿せない
大好き
幼い独占欲のために
ウィンディーを殺そうとするぐらい
純粋な恋心一つだけを持っている
感情留置場
「もしも」
「ん?」
「もしも・・・人がいつもひとつの心に振り回されていたら・・・」
言葉のパズル。
仮定の言葉はいつだって世界の疑問。
ありえないからこそ考えられる。
不快ではないけれど・・・きっと狂った遊び。
人はいつだって、
自分が傷つくことを前提に動いている
「ひとつの心か。ティンカーベルみたいたな」
「・・・ティンカ・・・もしかして、ピーターパンのッスか?」
「そう。妖精は小さいだろう?だから、いつもこころにはひとつのものしか抱けない。
だから、<ピーターパン>だけが特別で、あとはどうでもいい。
それだけのことで、自分が連れてきたウィンディを殺そうとする」
ピーターパンを奪われる恐怖から。
大切なものが、別のものを選ぼうとしている嫉妬から。
「もっとも、本当に<ひとつ>だけだったら、他の事なんてどうでもよかったら、我が物顔でくっついて、後から出てきた<ライバル>なんて、歯牙にもかけないものだとも思うんだけど」
恐怖も嫉妬も、結局は「別」の感情だという事。
大切なもの1つなら
それが笑っていてくれるのを望むのが本当の愛情?
「わからない」
「・・・?かい・・・」
「どこに、好きのボーダーライン引くべきか。
誰が・・・そんなものを定義できるほどの権限をもっているのか」
長い長い、用意された歴史の中で成立していった「ルール」はその原形を失って。
いつのまにか出来上がった「常識」という名のエゴの中で渦巻いて。
「そうだね。どこまでが、皆認めるアイシテルなんだろうね?」
性別に年齢差に血縁レベルにあつかいに。
少なくとも決めたのは神様じゃないと思うんだけど。
「ねぇ、先輩。許されなくて封じられた感情は何処に行くんだろう?」
ティンカーベルに捨てられた「これまであった感情」は、多分ネバーランドで眠っているのだろうけど。
常若の島にいけない中途半端な年齢の僕等のこころが、もし「諦め」無くてはいけなくなったら。
「みえない未来の仮定はやめとけよ。強くなる以外の仮定、お前には似合わない」
「・・・うぃっす」
貴方の隣りにいる以上、不要な不安なのだろうと信じてるから。
このはなしは、ここでおしまい。
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