私は6歳の時、コックになりたかった
7歳の時、ナポレオンになりたかった
              サルバトール・ダリ


不可視未来図

将来の夢
「なんかいかにもって宿題だな」
「っていうより、中学生への宿題か?」
「でも英語でってあたり、それっぽいにゃぁ」
外はうっとおしいまでに雨だってのに、何となく人が集まっている青学テニス部。
テニス馬鹿どもの話題の中心は、現在目下のところ<化物新人>の英語の宿題。
自分の将来の夢についての英作文。
じつに健全ほほえま話。
「んーやっぱお前のことだからテニスプレーヤー?目指せグランドスラム?」
「それはなんとなしに誰かがこなしているでしょ?折角だから<俺しか出来ないこと>ってのがほしいんすよ。無敗記録とか」
案外贅沢者王子。その辺から、話は外野に流れていく。
「自分にしかできないものかぁ」
「たかさんはやっぱ<河村ずし>の若旦那?」
「うん。多分ねー・・・乾は?」
「俺は・・・製薬会社の開発部で・・・」
「却下」
人間というのは、共通の敵を得たときに尤も強い団結力を有するという。
そういう点ではゴジラ並の乾。何か言い切る前に皆に止められる。
このとき、一介のテニス部は人類の未来を救った。無論、記録には残らないが。
「あ。乾先輩端っこでいじけてる・・・」
「ほっとけ」
うざいから。部長、どうやら何時もより(当社比)機嫌悪いらしい。走らせられないから?だとしたら逆に問題だ、この男。
「大石の希望は?」
「んー。福祉系かな。進みたいと思ってるよ」
天然癒し系、さすがといったところか。小児科とかも向くかも。彼の場合。
「不二は?」
「僕?知りたい?」

間。

「いーです」
この辺でも一同、異口同音。
調子は大分切実に。だってこれぐらいのことの筈なのに、開眼してるし。
下手に知ったら、明日からなんか周囲の視界の端々で黒尽くめの男性型を見かけたり、いきなり何にもないはずの空から植木鉢がおっこってきたりしそうで。
だって世界征服とかって聞こえたらどうすんの。
笑い飛ばせない人だよ?相手は。
「桃はどう?」
だから、話が流れてホッとした人間は少なくない。
寧ろ、大半。
「そうっすね。車とかバイクとかいじるかなぁ」
「桃は案外先生とか似合ってそう」
「あ、そーっすか?そーかな」
「同類(ガキ)ってことだろ?」
ぼそ。どこぞの黒い軍団の方ほどじゃないけど、やなこと呟いたのは勿論…
「あー?なにかいったかぁ?海堂」
「耳も悪いのか?ガキ」
いや、ガキだし。実際。
「んだとー?!」
で、二年組。何時もの展開、とか思いきや。
「じゃぁてめーは何になるっつーんだよ!」
 
 間、再び。

何故って海堂、普段色白の頬を赤くして、黙っちゃったから。
意外すぎの反応に、一同も固まる。特に桃。当然か。
そんな中で。
「えー?海堂は俺の嫁さんだろー?」
はっはー♪

げし。

復活したらしい乾氏、速退場AGAIN。駄目じゃん。今度は流血してるし。ギャグらしく。
「うぅ、サダハルリターン・・・」
「すな!色ボケ」
この時点でなんか、否定の言葉も欲しかった、とは他の人間の意見である。一応。
其れを知ってかしらずか、海堂も話のバトンを放り投げる。動揺してなきゃ、選ばない相手に。
「・・・。部長はどうっすか?」
「俺か?公務員だな」
宿題のプリントやりながら、部長みごとバトンを受け取り、即答。
・・・いえ、何もいいません。もぉ。
あ。そういえば。
「お前はどうなんだ?菊丸」
「おれ?」
そう。
結局レギュラー陣で応えてないの、君だけじゃないかな?
リョ―マはなんか、もう言ったとおりの事を文字にしてるけど。
「大石のお嫁さん」
こっちも即答。
でも、なんかもぉ、別の意味で反応できない一同。
「あ、そうなんだ」
誰一人としてその答え・・・予想していなかったわけではないのに反応に困ってしまうそれに何が言えるはずも無く。呟けたのは流石に毒気を抜かれてもまた自力精製する不二ぐらいなもの。

外は雨。

帰るに帰れず、結局バカップルを意識しないように、少年達は宿題に打ち込むのでした。


個人的には気に入っている話なんですがいかがなもんでしょう?
これ書いたのって交換日記最盛期
(最近のお客様にはわからないね・・・)
だったからなぁ・・・
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