幾重にも重ねられた物語の中でやっと浮き彫りになっていく。 いつか、 かのノートも切れ端のような言葉の欠片からその真を探り当てられるのだろうか? Impromptu 「例えば流河。君はキラの能力をどう理解する?」 そんな質問をした理由を、 自分に理由づけることは「今」でも出来ない。 「と、いうと?」 顔色がいいとはいえない甘党の男は、この言葉遊びに興味が引かれたのか、相変わらずの手づかみで角砂糖を紅茶の中に次々と落としながら声だけで返事をした。 自分に有利な問題だが、調子に乗ってしまえばすぐにでもぼろを出しかねない問いかけ。 背後の死神はおろおろしているが リューク。 危険を冒さないゲームは面白味を生みはしないんだよ。 それを今、教えてあげる。 「例えば、その犯罪者の名前を唱えて手を組むとか、さ」 「殺害<手段>ですか?難しいですね。 もしかしたら、その名前を顔を知っただけだという可能性すらあるのですから」 「そうだね。日本だから出来ないけれど、例えば犯人と思しき人間の部屋に盗撮カメラなんか設置したら、その行動でキラがその人物だとわかる、なんて簡単な話になりそうだと思ったんだけれど」 勿論、「自分がされていたことに気付いていない人間だからいえる言葉」のはずだろ?今のは。 さぁどう応える?心の隅だけで身構えていると、やがて男から納得したような呟き。 「そうですね」 さも、キラを捕らえる為ならば犯罪を犯すことすら気にしていない男は納得したように呟く。 お前だって犯罪者だ。 人の部屋に勝手にカメラだの盗聴器だのをつけるわ、死刑囚を身代わりにするわ。 指を刺して大声で騒いでやったら、少しはすっきりするだろうか? まさか。どうして気付いたのに黙っていたのかとつっこまれて話がややこしくなるだけだ。 あの時の僕に、それに気づいたと言う「きっかけ」はない。 捜したのは傍らの死神で、それのお陰で羞恥を捨てた行為すらカメラ越しに晒す羽目になった。 ・・・・・・・・・・あの時のデータ、ちゃんと処分されているんだろうな? 「確かに、この様な事件に関し、日本の法律は些か厄介です。 例えばその人物が犯罪者の名前を口にしたり、何かに書いたりしただけでその人間が死んでしまえば、一発でわかるのに」 考える時のクセは、そのまま相手を出し抜こうとする発想に転化される。 それは、キラに?それとも僕に? どの道、そういう仕草をばれない様にと細心の注意は払ったし結構コストもかけたのだけど。 ・・・・・・そのせいでGBASP(の、シルバー)の方が安いと喚いた約1名?をなだめるのにどれだけ苦労したか。 えぇい、どこを切ってもこいつが悪いんじゃないか。 「そうだな。もっとも、女性が容疑に上がった時なんか僕には法律で通っていてもうなづけないかな。 犯人じゃなくて結局やったことがばれた日には目も当てられない」 「ライト君ならごめんの一言で赦してもらえるでしょう。 私なら、張り手の1つや二つ、飛んできそうですが」 「目の下の隈を始めとする外見と据わるときのクセを治せば結構流河ももてると思うけどね」 「前者はキラが捕まればぐっすり眠れますから。 それより、座り方は・・・・」 「はいはい。思考力40%低下、だろう?まぁ僕は別に君がもてようともてまいと、興味はないから」 本音を言って、自分の分の紅茶を口元に傾ける。 他人の恋愛に興味はない。 それよりも興味深いことが、世界には、自分の中には次から次へとあふれ出ている。 「つめたいですね」 「君にあったかくしても価値が無いから」 「解りませんよ?キラじゃないと判断するかもしれない」 「だとしたら余計、媚を売っているみたいで不快になるね。 そんなの、僕のやり方に反するよ」 自分の言葉で、君の疑いを晴らすさ。 笑い出したいのを飲み込んでしまいながらそう告げると、本名を名乗らない男は君らしいですねと感心したのかあきれたのかよくわからない呟きを口にした。 僕らしいって? 白い顔をして君との言葉遊びを楽しみながら、壁に持たれかけるふりをして黒い翼に寄り添う。 本当の「僕らしい」を知っているのは、君には見えないこの翼の主だけだよ、L。 思い上がらないでくれ。 |
そんなわけで、タイトル、即興曲。
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