ミーミルの首 (head Of Mimir) |
北欧の神話において、オーディーンが所有した知恵者の首。 死した後も主神により利用され続ける存在。 |
とある連続殺人犯の脳が、医大の片隅で保管されているそうだ。
あの天才、アインシュタインの脳の傍らで。
公平なるもの
死は平等だ。
全ての存在に対し、静かに、確かにカウントされているのだ。
これほどに意味のある「絶対」が存在するだろうか?
「私が死んだら、その脳を保管しておきたいと言う申し出があったんです」
それは唐突に告げられた言葉で、どういう意味なのだろうと首を傾げるのだがうまく見つけることは出来なかった。
当然だ。
彼の言葉は自分に理解させようとして発したものではなく、ただこちらの反応を見るための言葉遊びのようなものでしかなかったのだから。
抜け殻の脳なんかどうするんだ?
リュ−クの疑問が背中の方から聞こえてくる。
それは自然で、酷く常識的な疑問で、逆にとてもおかしかった。
なんて「人間的」な発想だろう!
人間は研究と言う悪意のない無邪気な行為で、死神なんて予想も出来ない残忍な行為を行なえると言うのに。
「へぇ。
君は天才だと言うからね。死んだ後も貢献してほしいと言うことなんだろうね」
「えぇ。その時はキラの隣りに並べてくれるならと言い返しておきましたけれどね」
あっさりとした言葉が不快を憶える。
・・・・・・・・・死んだ後もこいつに付き合うのは勘弁だなと素直に思ったからだ。
「それは冗談として、私はミーミルの首になる気はありません」
「北欧神話だね。主神オーディーンの知恵袋。
確か伝承では知恵と未来を見据える力を与える泉の守り手という類もあったそうだけれど。
まぁたしかに。死んだ後にも他人に利用されるのは勘弁だな」
最も今の技術では、死んだ人間の脳から記憶を取り出したり会話したりなどと出切る筈がない。
かの天才と呼ばれた人物も、吸血鬼の異名を持つ殺人鬼もそのナレノ果テだけを晒して沈黙しているのだ。
人のエゴそのままに。
「まぁ死んだ後に自分をどうにかできるわけじゃないですし、死んでしまえばおしまいです。
購うことはできないでしょう」
彼は人というものを知っている。
知っているから距離を置き、狂気を分析できるのだろう。
だから死んだ後の自分も、予感する。
「大丈夫だよ、L」
「夜神君?」
でもね、L。
折角殺してあげるのに、「君」を残すなんて不快でしかないんだ。
「僕が、君をそんな目に合わせないから」
これだけは約束してあげよう。
君は本当に嫌いではないから、確実に死なせてあげる。
誰一人、君の欠片を手に入れることは出来ないように。
最高の方法をノートに記そう。
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