闇に沈むこと自体が
静かなる快楽のように
SilveryWaves
「・・・・・・・・・」
白い腕が闇に絡みつく。
まるでその闇と溶け合えればと望むように。
「・・・・・・」
白き身が闇の名を呼んだ。
彼だけが知る、かの者の名。
それは、ただそれだけで特別の象徴のように。
「・・・・」
闇が白きものの名を呼んだようだった。
何か金属質なものが、こすれあう音と共に。
「どちら」の名であったのかは、何故か聞き取れないのだけれど。
睦言の色は無く、ただ自らの腕の中を求める生き物の名を確かめたようだったが、それでも呼ばれたその姿は歓喜の表情をその白い顔(かんばせ)に載せた。
自らの姿を、闇が認めたことに酷く喜びを覚えているようだった。
「・・・あぁ!」
あまやかな悲鳴が輝きを示す名から零れ、白い首がのけぞった。
与えられた刺激にとろりと彼の瞳が蕩け、視界をけぶらせているのだろう。確かめるように何度も腕を伸ばし、闇を求める。
波打つかのように内壁を抉られる度、悲鳴と共にすすり泣くようにして内側に起こる嵐を逃れようと何度も首を振る様に、彼の淡い髪が何度も闇の中で舞った。
「あ・・ぁ・・・・・・・・!」
白い声が闇を呼ぶ。まるで内なる嵐から自らを救えるのがその自らを嵐の中に置き去りにする存在であるかのように。
闇に沈む己こそが、存在の故であるかのように。
目が醒めた。
日頃かかない筈の汗で服はじっとりと濡れ細り、重たくなっている。
呼吸すらどこか曖昧なバランスで、まるで現実味を欠いていた。
つい今までみていた、闇と光の儀式の中にいるように。
「・・・・・・・・・・・・」
暗い部屋が奇妙に明るいことに気付き、光源を追った。
ガラス張りの壁の向こうには、人の所業など興味を持たず、ただ太陽の光を反射する巨大な鏡が輝いていた。
天の存在と、名を同じくする者の名が頭の中で霞め、そしてやがて実像を結ぶ。
彼の白き者は、闇の名を知っているのだろうか?
問えば応えるだろう。
いつものどこかで警戒心を残した強い目で。
何のことだか、解らないよ、流河、と。
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