月明かりだけを浴びたい
それは限りない欲望にも似ていた



何も裂けぬ剣の価値





人の世は無駄に明るすぎる。



そう呟いたのは、人であるはずの姿と時間を持つ筈の存在だった。

光を冠する名をもつ綺麗な存在は、そういってベットの上で膝を抱えた。

なにか、あったのか?

常に傍にいるのに、彼の心を知ることは無く、それがもどかしいと思わないでもないのだが、久しく「人」などと言う弱いものから遠く離れている死神には、聞くことすら上手く出来ないのが常だった。

沈んだ、というよりも外界からの音も気配も全て遮断している状況の彼を見ることすら酷く重く、苦し紛れに外を常に見開いている眼でみると、重量はないはずなのにどこか重たい雲が延々と広がり、人の作り出した頼りない筈の光を乱反射させてぼんやりと明るくしている。

夜と呼ぶには、昔の世界を知るものには物足りない、その光景。


かつての夜は、本当に闇の領域であった筈なのに。

人は何時から、此れほど闇を恐れ始めたのだろう?

今この部屋で息を潜める彼は、多分例外としても。



「らいと」

「?」



「月に会いに行こう」


「・・・・・・・・・・・・うん」


誘われた言葉を、どれだけ理解できたのかよく解らない。

それ程に、応えたその声は酷く幼く・・・・・・・この人間の、幼い頃など知りもしないが・・・・無防備だったのだから。










空はどこまでも遠く闇とその中で息づく儚い輝きとで溢れていた。

そうとはしらずの行為だったが、儚さの中で、それは強烈なまでの光を広がる雲の上で放っていた。




満月、FULL MOON、望月。




呼び名は様々なれど、彼の名付け親はこの輝きに生まれたばかりの未だ宿命も決まらぬ頃のこの魂に重ねたのだろう。

月の意味は常に曖昧だ。

癒し、狂気、永遠、儚い、絶対、心変わり、生、死


全てのものが二面性を持つ中で、これほどまでに多くの象徴を司る存在は他にない。

それは確かにこの世界に、その存在が強く「ある」からなのだろう。


名を変えてではあるが、世界に浸透しつつある彼の存在は、そのものの、ように。


「月に、いきたいという気持ちが、わかるね」


黒い身体をベット代わりに、酷く力を抜いて天を仰いだ人間は、ゆっくりとその腕を同じ名を持つ存在へと伸ばした。


「あそこにあるのは、太陽の光を反射した岩の塊だ。
幾つもの水のない海と入り江、砂漠だけしかない乾いた大地だ。
なのに、いけないだろうかと思う。ねぇリューク。
僕はどうしてこんな人間だからこそ持つ愚かしい言葉に共感するんだろう?」



夢見ごこちで呟く人は、自分の命綱に問い掛ける。

だが黒い命綱は応えない。

彼のこの問いが、独り言であると、何となく悟ったからだ。


それは、あの黒いノート以外に形成された絆故と、人の世で異形と呼ばれる存在はきっと気がつかないのだろうけれど。



「ライトは月にいきたいのか?」

「別に。ただ、行きたいと言う言葉の意味が、理解できるというだけなんだ。
人間は単純で、愚かで、同じだけ矛盾している。
そしてそれは僕にも言えることだ」


自分が、人間だから。


時々彼はそう呟く。

自らを確認するかのように。

己が人であることを、



自分自身に言い訳するように。


其処に慈悲の刃は存在しない。

傷つけることでしか、おそらく彼は自らを「人」と確認できないのだ。






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えーっと。
クルタナって言う剣と言うネタにしては
なんだかあんまり噛んでいない話だなぁ、とは思うのですが。
人であることを愚かであるといいながら、
そうであることにしがみ付くライト。
人として、人の為に。でもそれが凄く疲れる瞬間が確かにあるということ。
ところでライトには何があったんでしょう?(をい)
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