会話と言うのは、実は酷く贅沢なのだ
お互いを認めていないと、成立しないのだから
Babillarde
死神は何でも知りたがる。
日長一日人間界を眺め、自らの寿命を延ばすために人を殺してきた存在は、そのくせに何も知らない事が多すぎて。
まるで子どものようだ、と想うのだけれど、その純粋な知識欲がとても、困った事に愛らしいと感じてしまうのだ。
・・・・・・・・自分にはないものだから。
「なぁなぁライト」
今日もなんだかくだらないことに興味を持って、人の勉強の邪魔をする。
でもどうしても、これを無視できないから自分でも少しおかしいなぁとほんの少しだけ思うけれど。
「どうしたんだい、リューク」
「なぁなぁ。これなにやってんだ?」
「え?」
死神の黒くて酷く長い爪先が示したのは、四角いテレビ画面だった。
最初は漫画のお約束の如く、テレビと言う機能を説明するのはとっても難しかった。
理屈はわかっているし、そう説明をすることも可能なのだが、困った事にその「理屈」を理解できないのだ。相手は。
ともかく、「見るもの」として認識してくれたことでその話は決着がついて、以来、瞼の無い生き物の興味は内容の方に移って行ったのだ。
さて今日は何の話か映像か。
見るとなんだかべったべたな恋愛物が流れている。
大昔の作品の再放送らしい。見てはいないが、内容は大体知っているし見当がつく、という類だ。
画面の中で、古臭い恰好の女優が棒立ちの男優に詰め寄っている。
本当に自分を愛しているのか。
くだらない、と単純に想う。
確かにこんな会話「何をしているんだ」と言われて当然だろうと納得してしまう。
こういう意見は、成程、実直だからこその「異常」なのだろう。
「馬鹿な話、だよ」
「・・・・・・・・・・あぅ?」
他に説明のしようが無い。
が、意味がわからないのか首を傾げた死神は、そのままぐぐっと変に体ごとぐるりん、と回転する。
一周するのを待ってから、もう一度云った。
「幸せになる手段に自信が無い人間の、浅はかで馬鹿な話だ。
なに?リュークは興味ある?」
「変だ」
「うん?」
「人間は、自分でややこしくなるように何で動くんだ?」
「・・・・・・・退屈だからじゃ、無いの?
だから、何かしらのトラブルを期待して自分でややこしくするんだ」
なんとなく、そう告げてしまった。
不安は、退屈だ。
それは多分、誰にも言えること。
それを崩すことが出来たきっかけは、この死神が用意した一冊のノート。
それは、偶々、自分が手に入れることが出来ただけの「暇潰し」から発展した「目標」。
「人間界は面白いぞ」
死神は不思議そうに云ってきた。
何もかもが珍しいのなら。
確かに退屈じゃないだろうけれど・・・・
「ライトがいるからな」
無防備な言葉の続きにビックリする。
しまった。やられた。なんだかとってもそんな事を思う。
この死神は、決して深い意味で言ったわけじゃない。
それはわかっている。
「そうか。このメスはライトがいないからつまんなくて変なこと言ってるんだな」
・・・・・・・・・・・・・・
時々、この無邪気な言葉の使い方にはとっても疲れてしまう。
やられた、というか、もうとにかく勘弁してくれと言うか。
なのに、どうしても。
同じだけ、嬉しいと思ってしまう自分が
もうすっかり、退屈から解き放たれているその証拠そのものであると自覚させられるのだ。
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