遠回りしていこう。
其れが刹那の時間でも
お題:月
Circuitous Route
「ライト、そっちの道違うんじゃないか?」
死神の声に、少しビックリした。
いきなれた帰り道を、惑う程、考え事をしていたわけでもない筈なのに、自分が足を向けた先はどう考えても帰宅するには遠くなる道のり。
「珍しいな」
非効率的なことを嫌う僕の性癖をよくよく知っている死神は、此方が困る感想をなんでもないことのように口にする。
確かに、珍しいと思う。
「・・・・・・・・・うん」
思わず同意してしまったのは、自分自身、いましたばかりの行動が理解できなかったからに他ならない。
「そうだ、ね」
「あぁ」
「?」
疑問を問いたはずの死神が、突然納得した、といわんばかりの声をあげた。
なに?と死神の目線・・・・・天を仰ぐ。
月が出ていた。
冷たく厳かに、どこまでも孤高。
自らの名の程度など、まるで歯牙にもかけないように。
あまりに明るすぎて、周囲の星星も、また地上の拙い技術で生まれた明かりも全て飲み込まんとするほど、強い光が降り注いでいる。
「月が、青いからか」
「え?」
「月が青い時は、遠回りするんだろう?」
古い歌謡曲の一説のことだろうか?
異形の顔をして無邪気に笑う死神はそんな些細な記憶力にどうだといわんばかりに胸を張る。
少し、笑った。
それから、そうだね、といった。
遠回りする理由は
その程度のことで十分だ。
「じゃぁ少し、遠回りしようか、リュ―ク」
「うほっ♪」
2人で歩く、道。
月の光は、死神の影を作ることがなかったけれど。
確かに僕ら2人を照らしていた。
今はただ、選んだ宿命のもたらした存在との時間を。
どうか赦してください。
罪ならば、僕が一人で。
果てのいつかに必ず購いますから。
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