闇宵に嗤い
現に爪を立てる
CITY MAZE(7)
彼はいつも、不意に訪れる。
日々まるで無邪気な子供のように遊び続け、その後で思い出したように探偵の前に現れ、特に何を話しかけるわけでも、特に何をしようとするわけでもなくゆるく笑ってそしていつもいつの間にかその姿を消す。
まるで幻のように。
確かな、存在感がそこにはあるのに。
「・・・・・・・・夜神君」
「・・・・・・・・・」
かつて呼んだ名では、彼は沈黙する。
その名は、すっかり捨ててしまったと、そう主張しているかのようだ。
しかし探偵には他の名で呼ぶその気など起きる事もなくて、結局曖昧な時間ばかりが静かに過ぎる。
「キラとは、なんでしょう?」
「・・・・・・・・・」
だから独り言のつもりで、こんなことを呟く。
答えは返ってこなかったが、探偵は言葉を重ねた。
「人が作り出した、幻想。
名を与えられずいる、影、そのもの」
「・・・・・・・・・」
目の前に。
その形があるのに、人の世界を見れば幻の、存在。
不可解な黄昏色の存在は、自らを否定しかねない表現にもゆるく嗤ったままだった。
目が告げている。
人の世に顔を出さず、影で事件を解決することに悦を覚えている男が、何を言っているのかと。
人を欺くのは同じ。
己の正義を貫く行為であることも。
その方向が、まったく逆にあったとしても。
「人が求めるのは、<誰>なんでしょうね・・・・・・?」
黄昏はいつものようにこちらの言葉を聞いているのかいないのか、気にもしないように冷たく嗤い、興味ないねといわんばかりにその姿を翻した。
もう見ることはできないけれど、彼の傍らにはやはりあの黒い姿があるのだろうか?
まるで、2人隣り合うことがさも宿命であるかのように。
「馬鹿だな、こいつ」
黒い死神が探偵の聞こえない声で呟いた。
黄昏の死神には、甘く届く、低い声。
「月は、俺のものだ」
「・・・・・・・・」
「俺は、月を求める」
「人が欲しがっているのは、月の影だ」
「・・・・・・・」
キラという存在。
月という存在。
それは
Lという存在と
「探偵」としての存在に。
とてもよく似ている。
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