世界など
矛盾の上でしか成立しない
CITY MAZE(9)
寓話、都市伝説、噂話。
言い方は多々あれど、其処に意図されているのは「偽りの現実」とも言うべきものだ。
人は常に現実とは全く異なる位置にあって、同時にリアリティを抱くその奇妙な位置にある物語を求める。
それは、おそらく。
決して起こらないと知っているからこその、いわば安全圏にある「テレビ越しの世界」であるからに他ならないのだろう。
しかし、例外は確かに存在しているのだ。
「KIRA」
かつて実在した、絶対的な連続殺人犯。
犯罪者を次々と刈り取った、正体不明の「死神」。
一時はその存在が、現象として取り扱われ、そして消滅したことが宣言された。
人々の記憶からも、日常からも。
徐々にその「名付けられた死神」はまるで残り香のように徐々に霧散していった。
それを、消えていくことを止める手段を持つ人間はいなかった。
人の世は良くも悪くも流れ、流動し、変動するものだから。
しかしてその名を与えられた存在は、明確な記録から、伝説に帰化した。
「都市伝説と言うものは時として非常に大きな矛盾性をはらんでいる。
体験者自身の死で終わるEDや、所謂亜種の発生。そしてなにより、この文明社会において、それに連なる事件が起きたというニュースが報道されていないということ。
オリジナルの事件や事象を辿ることは出来ても、分化された情報は奇怪な増長を繰り返している。
その中に会って、かつてあった事件の所謂アレンジ・・・・それが現在君達が耳にする<黄昏の天使>だと考えられるだろう。
しかし気になるのは、実際に天使にあったような顔をして死亡している人間が存在するという点だ。
しかもその殆どが実際に犯罪を犯している、若しくは犯したとみられる。偶然に片付けるには、あまりにも不可解だ」
その研究者は淡々と自説を読んでいた。
社会心理について研究を続けていた彼は、最近生まれた「噂話」に興味を惹かれていた。
しかし、答えは其処にはなくて、答えを出すには世の中はあまりにもモラリストがあふれかえっていて。
ただ彼は、疑問に思えとしか告げることが出来ない。
人の世を。
変えようとしている誰かがいるという、この今を。
真実を捉えていた彼を、そうだと肯定するものは、永遠に現れることはなかった。
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