うさぎのように 寂しければ死んでしまうほど弱ければ きっと僕は りんごにさとう 林檎はそのまま食べるのが一番うまいと想っていた死神は、最近考えを改めた。 だって今自分のノートを持っている人間がくれたものと、そうでないものとではぜんぜん味が違うって気がついたから。 いつもよりも甘くておいしい林檎。 人間の手に何かついているのかなと思って、一度それを舐めてみたけれど、少ししょっぱいだけでぜんぜん甘くなかった。 なにをするんだと驚いた顔をした人間に、ちゃんとそのことを言ってみた。 甘いと思ったのに、しょっぱかった。 そういったら人間はめずらしくきょとんと無防備な顔をして、それから何か納得したのかこらえきれないように笑ったのだ。 一通り限界まで笑った後、綺麗な顔をした人間は綺麗な笑顔で「試してみる?」と問いかけた。 なにを、と。 そう聞くのが野暮なことぐらい、鈍い死神の頭にも分かった。 人間の身体は甘くなかったけれど。 酷く死神を夢中にさせた。 そう、林檎と同じぐらい。 探偵は時折疎外感を覚える。 それは自分の一番近くにいるはずの人間が、自分をさもいないかのように振舞うときだ。 彼を責める事は出来ないだろう。 彼には全く積はない。 普通に振舞い、自分を拘束している人間を友人と呼び、実際信頼を寄せているし寄せられていると思う。 けれども不意に目の前にいる人間などいないかのように背後を振り返り、ためらいがちにその腕をさまよわせる。 何気ない仕草で。 当然のことのように。 「夜神君は」 「?」 「どなたをお探しなのですか?」 「え?」 「捜されているでしょう?」 重ねる問いに僅かならも憤りが混じるのは覚える疎外感が原因かそれとも。 言葉の意味合いを図りかねているわけではなく、自分でも自覚することがあるのか困った顔をする彼はどこか遠いまなざしをみせた。 捜しているのだろう、本当に。 自らのその意思を図りかねながらも確かに。 「なんだか、私は時々疎外感を覚えます」 「疎外感?」 「夜神君が、私を見ていないことに対する、疎外感です」 言われている意味がわからないのか首をかしげた彼は、しかしその後で静かにこういった。 「疎外感なら、僕のほうが強いと思うよ」 どういうことかと聞いてみると、よく自分でもわからないのだけれど、と前置きされて。 彼はやっぱりどこか遠くを見ながら言葉を繋げた。 「居場所が違うなって思うんだ」 「居場所?」 「勿論、本来僕はただの大学生で、こんなところでこんな生活をするのが日常じゃないのは当然だと思うんだけれど。 そういうレベルじゃなくって、単純に、ここという世界に拒絶されているようなそんな気がしているんだ」 「それが、疎外感なんですか?」 拒絶しているのは自分自身で、世界に対して「違う」と思うのはキラということではないのだろうか? そう重ねてみても良かったが、彼の目は本当に途方にくれているように映った。 探偵にも覚えがある表情。 今まで確信もって存在していたものが、突然融解してしまったかのように、無くなってしまったような。 「どこにいるんだろうね、僕の居場所」 「・・・・・・・・いる、ですか?ある、ではなく?」 「うん、多分ね」 そういって彼の目はまた探偵を映さなくなる。 その居場所に恋焦がれているようだ。 探偵はそう思い、彼をこんなにするその「居場所」に激しく嫉妬した。 それは敵う事が無いことを、無意識にでも承知しているからだと。 認めたくなくて、爪を噛んだ。
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