死は何処にでもある。ポップと同じだね。 (アンディ・ウォーホール) 咎人の聖夜 「所詮2000歳を超えるおっさんの誕生日! んなもんにロマンを覚える方が間違っている!」 今年も中途半端に予定が入らなかった妹が自分に言い聞かせるように拳を突き出して叫んだ。 その様子をわき目に、僕が外出を告げると、途端妹は世に情けない顔を見せた。 「おにいちゃんの裏切りものー」 「別に家族ですごす約束なんてしていないし」 裏切ったなんていわれても。 さして困っているわけでもなかったが肩をすくめて言葉を重ねる。 自分でもいっていることの不条理は自覚があるのか、引き下がるのも早い妹に気づかれないように苦味のある笑みを浮かべてドアをくぐる。 肌を刺すような馬鹿騒ぎを嫌っている寒さが心地よい。 少し、背中にいる存在に似ていて。 「ねぇリュ―ク知ってる?」 「?」 「キリスト教創始者とされる妹の言うところの<おっさん>の実際の誕生日は12月25日じゃ無かったって言う話」 「知らない。違うのか?」 毎年騒いでるじゃないか。 人の世を覗き見て長い時間を過ごしている死神はそういった。 言葉と一緒に吐き出される息に、自分のような白い存在感は無い。 もっとも、傍目からみて呼吸の名残ばかりが空中の何も無いところからでていたらきっとオカルトなんだろうけれど。 「諸説様々、実際25日(正確には24日深夜)という説も勿論あるのだけれど、年明け8日っていうのが確か有力だったかな」 「じゃぁなんで?」 覚えているわけじゃなさそうなのに、疑問はすぐに解消したい。 死神のニーズに応えて僕は昔読んだ実は曖昧な説を口にする。 「24日の深夜にキリストの誕生を示すビックスター・・・・ほら、ツリーの一番上に飾る星のこと。あれが駆けたのを三賢者が見た日だからさ。 最も、あれは当時来ていた彗星だという説が一番納得するね。彼は生まれた時から運を味方につけていたのさ」 僕みたいにね。 そう告げると死神はクク、と咽喉の奥で笑った。 「運か不運かは・・・・未だ分からないぞ、ライト。 あの男は、死すらを味方につけた。 俺はお前の、敵でもなければ味方でもない」 死を遂げ、なおも復活することで神格化した運命を抱く男。 そしてキラとして回りだした自分の運命。 全ての始まりである死神のなぞかけめいた言葉すら心地よく耳を打つ。 「そうかな?」 「あぁ」 短い会話はどこか幼く、曖昧に響く。 運で済ますつもりは無い。張り巡らせた糸を巧みに操り、世界という操り人形を躍らせる神となるべき身として。 「でもね。リュ―ク」 「?」 「人の短い一生の中で、君がノートを落としたこと。僕があのときにノートを拾ったこと。君に会えたこと。それら全てが、意味をなしている」 「・・・・・・・・」 「最高の、強運だったと思わないかい?」 その答えは、誰にもとがめられることの無い緩い抱擁。 人とは違う体温は、それでも冬の寒さに比べれば甘さを孕む。 「さ。おいしいアップルパイでも買って、2人で食べようか?」 「ライトは、死神を喜ばせる術を知っているな」 「そうかな?」 「そうさ」 そうして。 少しづつ。 世界に張り巡らせた筈の糸を死神にすら絡めて。 僕は信仰を超える。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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