みつけたら、そりゃぁ。
本人がそれを見ていても、買ってあげるのが人情って、いえるかな?
チョコレートの中の雫
「はい、リュ―ク。あげる」
「あ?」
ひょい、と投げられたそれを死神はビックリした声を上げながらも反射的に口をあけてそれを受け止めた。
甘苦い香りが、じわり、と死神の口の中に広がる。
「あぁえ?」
「チョコは初めて?」
「さっき買った奴だな。なんか甘いけど苦い。変な味だ」
死神の素直な応えに、笑いが零れる。
確かに、そうかもしれない。
「もう噛んだ?」
「いや?」
「じゃ、噛んでみて」
促された死神は、何の疑いもせずにその行動を実行する。
とたん、うほっ、と驚きの声を上げる。
「ライト、林檎の味がするぞ」
「うん。そう」
林檎のコンポートと、カルヴァドス(林檎のブランデー)のチョコレートボンボン。
この時期に男が買うものじゃないかもしれないけれど、折角だから食べて欲しくて。
変な話だけど。
今まで冷めてみていた、お菓子会社の陰謀に、今回だけは「感謝」の意味をこめて乗ってみたくなったのだ。
どうして今日に限ってと、死神が聞いてくる前に、もっと食べると畳み掛ける。
林檎の味と香りが寧ろ強調されているそれは気に入ったようで、死神はそれに素直に肯定を口にする。
ただ、もらう時に。
「ライトは俺を喜ばせるのも天才だな」
無邪気に恥ずかしいことを言う才能は、少しだけ直してもらいたいなとちょっとだけ思ったりして。
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||