Andante
自身を危険の縁に案内しておきながら、同時に最愛の人間を与えてくれた死神の死に、彼女は最初意味を理解できなかったのか、小さく首をかしげた。
「死んじゃったの?」
「そういうことになるかな」
「私のため?」
「そう、だね」
子供めいたその口調は言葉をどうやって理解しようかと一生懸命になっているようにも、ただことを理解しきれずに呆然としているようにも見える。
ただ、沈黙が続いた。
どれ位だろうか?
彼女はやっと呼吸を思い出したとでも言わんばかりの長い溜め息を一つついたあとで、そっか、と小さく呟いた。
「泣かないの?」
「どうして?」
つい問いかけた言葉に彼女は言葉を返した。
己が受けた問いに、本当に理解できないといわんばかりに。
「どうして泣かなきゃならないの?
レムは私のために死んだのに」
そう呟いた彼女は息を飲むほど穏やかな笑顔で好きだという男に微笑んだ。
それが彼女の笑顔ではないと疑うほど、大人びて全てを知っているかのような。
「ねぇライト。
私は幸せなの。
私はこんなに愛されてる。
勿論ライトにも愛されてるし、2人の死神にまで愛されていた。
こんなに幸せなことってある?」
彼女は微笑んだ。
ココロから、本当に幸せだと。そう告げている。
「ライト、忘れないで。
私は、幸せなの」
彼女は殊更強調するように同じ言葉を繰り返した。
甘たるいその声は睦言のようで、己に言い聞かせているという様子はない。
「幸せなの。だから」
「だから?」
「ライトが気に病むことは無いのよ?」
「・・・・・・・・」
男は息を飲んだ。
気を病んだつもりはない、ということは出来ない。
それは全て、彼の狙い通りだからに他ならない。
けれど彼女は彼が「死なせてしまった」と気にしていると信じている。
「大丈夫」
背越しに、生き残った黒い死神が咽喉の奥で笑ったようだった。
彼女の見当違いの強さに対してなのか、それとも・・・・・・・
「あぁ」
心無い、ゲームマスターの真理を知ってなのか。
「有難う、ミサ」
敗北した探偵の後代が、彼らの前に現れるのは、もうすぐの事。
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