その目が証
その目が真実
用意された
「神」になるべくして産まれた貴女








     FILE:01 数字










「ねぇ、ママ」
幼い少女が手を引く母親に問いかけた。
母と呼ぶにはまだ女性は若々しいが、彼女はにっこりと自分の娘と目を合わせる。
彼女の癖だ。
会話をする時、彼女は娘と視線を合わせる。
こんな風に街中でも、少し端に寄ってから、ちゃんと言葉を交わす。
時折。
傅いているようにも見えるほど、堅実に。
「なぁに?」
「すうじがあるの」
「数字?」
「あと、もじ」
幼いながらも、一度もあったことの無い男親を髣髴させる利発な娘は、少し困ったように自分の見えるものを告げる。
「文字?どんな?」
母は問いかける。
急いているのを、まるで無理矢理抑えているようだ。
「かんじ」
「読める?」
「よめないよ」
「でも、みえるのね」
「うん。でもね、このまえおともだちにはなしたら、へんだって。
ひとのあたまのうえにすうじともじなんかないって」
私病気なのかなぁ?
娘が不安に呟くのを、しかし母は心から幸せそうに笑った。
「ママ?」
娘は混乱した声を上げる。
その笑みの意味がわからなくて。
けれど母は、ぎゅぅ、っと自分の娘を抱きしめた。

「キラ・・・・・・」

呟かれた聞き覚えの無いそれは、名前だろうか?
わたしはりかだよ?
そういおうとする前に、母は自分の娘にゆったりと微笑む。
それは。
幼い子供にはわかるはずもないが、確実な信仰の目をしていた。

「ママッ」
「大丈夫、リカ。ママにもあるから」
「え?」

ゆったりと離れていき、ココロから笑う母の言葉に耳を疑う。
だって誰一人、彼女の言葉を肯定する人間はいなかったのだ。今まで。
けれど彼女は確かに言う。

「例えば」
「?」
「あの人」

彼女は本当に無作為に道行く人間の一人を指差した。
娘は小さく首をかしげる。
その人の頭の上にも、やっぱり漢字と数字が浮いている。

そして母は、娘の見ている数字をずばり口にした。

「えっ?」
「あっていた?」
「うん!なんで?!」

びっくりしている少女に彼女は笑う。
だって貴女のママだもの。
得意げに。そしてキッパリと。
その後で、不意に。

「ねぇ、リカ」
「なぁに?ママ」
「ママの上にも、数字は見える?」

少女は問われた言葉にキョトン、ととした。
しかし一度自分の母を見つめ、ゆっくりと、どこかたどたどしく頷いた。
母は再び彼女を抱きしめた。
あぁライト、と。
何度も聞いている父親の名前をまるで祈るように何度も自分の娘の耳元で呟く。
そして感極まったように、祈りの言葉を口にする。

「貴女に、全ての祝福と神の栄誉を」
「ママ?」

意味がよく解らなくて少女は母を取り戻そうと名を何度も繰り返す。
だが彼女は笑う。
本当に幸せそうに。
こころから。

「りか。あなたはいつか知ることが出来るわ」
「しる?」
「えぇ。その文字と数字の意味を。いとおしさを。
その重さを。役割を。そして、役目を」
「ママ、むずかしいっ」
少女はいらだったように声を上げた。
だが幸せに浸っている母親は気がつかない。
本当に幸せなのだと、それがよくわかるから、少女もこれ以上問いかけられない。

「とても素敵なことよ。絶対、ママ以外には内緒にしていなければならないけれど。
さ、行きましょう」

彼女は笑い、娘を促す。
この会話はここで終わり。
ただ娘の中にはこの事は人に話しちゃいけないことなんだと。
それだけはわかったから、それだけを承知して、母についていく。
綺麗だし、仕事の関係で有名な母は、街中でたくさんの人たちに振り返られる。
でも彼女の目には誰も映らない。

娘は知っている。

ママはパパしか見ていない。
娘のじぶんも、さっきまでは見ていなかった。
パパの子供としか、みていなかった。

けれど。

 「・・・・・・・・キラ」

あの名前。
あの一言。
それでママは・・・・・・・

(私をココロから抱きしめてくれた・・・・・)

話して良かったと。
素直に想った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
痛いイタイイタイ。
っていうか5・6歳のつもりで書いたんですが・・・
どこが就学前やねん(^^;
っていうかリカちゃんの目の秘密は後ほど。
すっとんだ設定ですが、赦してください(土下座

いえ、せめて更新してからいう話なんですが・・・
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送