さぁ始めようか?
逃れられぬ宿命の宴を
その始まりは、確かにお前が踏み出したのだから








FILE:03 遺伝








黒い異形がそこにはいた。
その異形と目の合ったミカは心拍数が上がるのを押さえ切れない。

「よぅ」

異形が告げた。
ゆっくりと。やけに親しみを込めて。
だから彼女は穏やかさを取り戻した。
この相手は自分を傷つけることはない。
それだけは、確かな事実だから。受け入れなければ。
けれど確認しなきゃならないことは、いくつか。

「だれ?」
「しらないか」

異形は少しだけ寂しさと、からかうような口調でこちらを見た。
その目は姿とは相反し、穏やかで、優しい。

「しらない」
「そうだな。ミサは?」

さもありなんと異形は頷く。
そして問う。母の所在を。

「逝った」
「それは知っている。ミサは?」

異形は問いを重ねた。
こたえの手段がわからず、少女は首を傾げたが、ふいに意味を承知して、とろりと笑う。
先程のものとは全く違う、やけに誇らしそうな笑みだった。

「満足してたみたい・・・・・・・あなたが、レム?」
「レムは月に殺された。ミサの命と引き換えに」

ミカは目を見開いた。
黒い異形が満足そうに頷いたこともそうだった。
だが、自分の問いの答えが思っても見ない告白だったから、当然のこと。

「パパが?」
「選んだのは、レムだがな」
「・・・・・・・・・・・じゃぁあなたは?」
「俺はリュ―ク。お前の持つ、元々のノートの持ち主だ、リカ」

少女が身を竦めた。
告げられた言葉の意味を、彼女は正確に拾った証だった。

「私も殺す?」
「何故?なぜそんな、月の意志を尊重しない真似をしなければならない?」
「え?」

感慨深げに呟くその異形は、幼い子供を思わせるように少し首をかしげた。
本当にいわれた意味を理解しがたいといわんばかりの調子で問いを返した。

「俺は月が望んだことは叶えてやるつもりだ。
それが死ねる機会を失った俺の存在理由だから」
「・・・・・・・・・・?」

言葉の意味がわからなくて、彼女は頭を振った。
解らない。
そう叫ぶ気力も無く、ただ無気力に。

「私はどうすればいいの?」

それだけが今彼女を立たせている理由そのものだった。
ただ。本当に純粋に。
その疑問だけが彼女を犯す。
それは答えを目の前の異形が知っているからと、そう信じていたからに他ならない。
けれど。

「お前が決める」
「・・・・・・・・っ」
「俺は傍観者だ。全ての選択権はお前に帰属するよ、ミカ・・・・・・
いや。キラ、と呼ぶべきか?俺の娘」
「?!」

少女は目を見開く。
言葉も出ないまま、ただ自分を娘だと言った異形を穴が開くほど見つめる。

「何も聞いていないんだな」
「しらない。私は、夜神ミカ。夜神ライトと、ミサの娘でしょう?」
「そして俺の遺伝子という奴も入っているらしい。
よくわからない。だが、月がお前をミサに生ませた時、細工をしたそうだ。
だから娘だと、月から教えてもらった。
証拠はあるだろう?契約をせず、手に入れたその死神の目が証」

長い指がミカのクビを捕らえた。
促されるまま無理矢理、空に浮く異形と目を合わさせられる。
大きなその瞳に映る自分は、愕然としている半面で妙な昂揚感を否定できずにいた。

「あなたはなに?リュ―ク」
「死神。傍観者。キラの背に立つもの。
・・・・・・そして、お前のもう一人の父だと、月が言った。ミカ」

死神が告げる。
その言葉に絶望を植え付けるように。
けれどなぜか。
少女は思った以上にその事実を暖かく感じていた。

「わたし、ひとりぼっちじゃないんだ」
「ひとり?何故?お前には月も、ミサもいる」
「・・・・・・・・・・・そして、リュ―クも?」
「そして、キラも」

そして。

「さぁ選べ。今度こそ完全なるキラになれと望まれて生まれた娘。
だがお前の人の父はけっしてそればかりを祈っていない。
人として全うしたくば、ノートを手放せ。それでいい」
「聞いていい?お父様」
「さま?」
「夜神月の方はパパだから。違う呼び名がいいかなって思って。
ねぇこれだけは確かめさせて。ママは、キラだったの?」
「ミサも月も、キラと呼ばれる存在であったことがある。
だがそれに意味はあるか?さっきも言ったが、決めるのはお前だ。ミカ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
少女は長いこと沈黙をしていた。
それはいわれた意味を理解しようと躍起になっているようにも。
ただ過ぎる時を待ってどこかに落ちているかもしれない答えに期待しているようにも見えて。

そして。

ふいに微笑んだ彼女の口元からは、緩やかに言葉が零れた。
謳うように。
言葉と、ダンスを踊るように。

「私が。キラを継ぎ、そして真のキラになるのが、宿命であるならば」

黒き異形が口元を引き上げる。

「楽しませてもらおうか」

そして。
総てが再び始まる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

と、いうわけで。
ごめんなさいっ
うわぁ、どうしようこれ(汗
てかまぁ、そういう種明かしでした。
ある意味ですげぇ反則なんだけど。
いや、月ならやりかねんと(こらこら
あと2つ。よろしく。
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