狭い部屋から、やっと表に出られたような。 けれどそんな気持ちになった僕が欲しかったのは、真っ黒な、闇のツバサ。 A Tempo 死神は基本的に性交渉を行なわない。 必要ないとか欲求がないとかもあるだろうけれど、これもまた「ボーダー」なのだと僕は考える。 引いておかなければならない一線。 それの重さを、僕は知っている。 思い入れを深めれば深めるほど、そう。自分たちという存在は互いに危険な物になっていく。 思いの深さに死を迎えるなんて。 別離という発想は、理性ある存在なら、当然の選択。 けれど・・・・・・・ (僕は、限りなくもっとも、理性的に動いてきた筈なのに) 「ねぇ、リュ―ク」 「どうした?月」 「・・・・・・見て」 自分でも呆気にとられるほど媚びも誘いもそこには無く、まるで実験の結果を見せ付けるように。 僕はゆっくりと手にしたネクタイを解き始める。 何をするのかと興味深くに見つめてくる異形の目線を強く感じながら、僕は頼まれてもいないストリップを始める。 ネクタイ ジャケット シャツ スラックス そして 全裸になって立ちすくす僕を死神は首をかしげて探るような目で見つめてきた。 お前は何をしている? そう問いかけてくる視線に、溜め息にすら熱が籠もった。 「これが、僕だ」 僕は告げる。 そう。今ここにいるのは、僕という存在。 そうであることを、まるで確認するように。 「そうだな。今、俺の前にいるのは、夜神 月だな」 死神は酷く納得した口調で頷く。 そして、続けた。 「世間という狭い人の世にキラという狂喜の偶像を作り、その偶像を操って人の身でありながら神になる手段を模索し続け。 目的の為ならばいくらでも非情に冷酷に、そして理性的に全てを利用する人間だ. 人も、時として死神すら」 「・・・・・・・・・・」 全てを見てきた死神は、淡々と告げる。 今まで見てきたものを。 これから見ていくものを。 「どうした?月。今更確認するまでも無いだろう。お前はお前以外の何者でもない。 理性と狂気、二つの正義を確実にその手に持ち、双方に口付け、堕ちていく者だ」 「・・・・・・・・・・・」 敵でも味方でもない。 そう公言する死神は、いっそ穏やかにそうと告げる。 そう。 知っている。自分は。 堕ちていくだけの存在だということ。 おそらく。 キラとしても、夜神月としても。 「リュ―ク」 「なんだ?」 「ひとつ、きいてもいい?」 「林檎をくれたらな」 「僕は、綺麗かな?」 その、意味を。 はたしてこの林檎しか頭に無い死神に求めていたのかどうかわから無い。 自分自身すら、わからない問いの答えとして。 「月は、月だ」 死神はそれだけ答えた。 「月以外の、なにものでもない」 「・・・・・・・・・」 「なにか、おかしいか?」 「・・・・・・・・・・」 いいや、とも。 そうだね、とも。 言葉にはならなかった。 ただ。 「リュ―クって、哲学的だね」 「?」 死神にはわからない、皮肉が滑り出るぐらいには。 おそらく、ショックだったのかもしれない。 |
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