選ぶということは
覚悟する、ということに他ならず。
Animato
(覚悟がなかったといえばウソになるけれど。
あったとしても、嘘にしかならない)
機内独特の音を聞きながら、月は一人ごちた。
傍らでは当初ははしゃいでいたミサが、反応のない「恋人」に焦れたのか、単に忙しい日常に疲れたのか、可愛らしく寝息を立てている。
彼女は、他人への感情が酷く希薄だ。
おそらく両親を酷い理由で失ったころから、良くも悪くも悟ってしまったのだろう。
だから恐らく、自分の特別である相手が己の妹や父を案じている感情そのものに、理解が及ばない。
しかしその一件の気楽な思想は、「キラ」には少し、羨ましい。
(特別、はなく)
何一つ、特別など持たず。
人を、人として思うことなどなく。
(ただ、己の正義の為に)
柵を捨てきれない人間としての自分が、こんなに重たかったのかと今回の件は思い知らされるのだ。
孤高を選んだのなら、もっと早く、本来なら離れるべきだったのか、と。
しがらみから、血から。
人であることから。
(いや、ちがう)
囚われそうになる思想を思い直す。
(僕は、表裏でこの立場を確立しなければならなかった)
言い訳ではなく、誓いとして心に再び告げる。
キラが幻ではならないのと同時に、夜神月もまた、リアルでならなければならない。
「リュ―ク」
「なんだ?月」
「どうして死神は、ノートの所有者となった人間のそばにいるんだい?」
「どういう意味だ?」
「ちょっとね、愚痴」
「?めずらしいな」
その意味を問うでもなく。
その不条理な責め苦に反するでもなく。
ただそれだけを告げることが、実は今、最も甘く響く睦言。
「そうだね、めずらし」
「・・・・・・・・・・」
「未だ僕は夜神月なんだと、思い知らされる。
そして多分、それはリュ―クがいるから」
それに甘え、やはり不可解な言葉が形になる。
見えない鎖が、音を立てて形になっていく。
「・・・?」
「わかる?わから無いよね。
それでいいんだよ。八つ当たりだから」
「月はいつも、難しいことばかり言うんだな」
死神はどこか子供じみた口調で、それだけを返した。
月はふ、と笑いを堪えきれず、口元を歪める。
「そうだね。
難しい、ことばかりだ」
キラであるための傍観者で。
夜神月である為の命綱。
いなければ確立されなかったこの関係を。
甘受したことこそが、もしかしたら最大の罪。
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