Brio 「何であんな事したんですか?」 よりによって件のノートを手中に収めた人間に名前を教えるなんて。 知能のある人間なのは確実であるらしいから、けっこうあっさりとざくっと殺されてしまう可能性が否定できない。 彼は、ノートの力をまだ理解していないとでも言うのだろうか? 「え?だってほら、月君が殺されちゃったらこのチームきっと立ち往生して、キラどころか例のメロだっけ?そのこも捕まえられないじゃないか。 あいにく僕は使い勝手の悪いおまけみたいな人間だし、まぁこう言う点で役に立てばそれなりに・・・・・・うん。むこうにいったとき、Lに誉めてもらえるかな、なんて」 「え・・・・・・・・?」 困ったように笑い、告げた言葉の意外さに耳を疑う。 探偵の名前。 今敵対しているのが彼の正統後継者だというのに、やっぱりその頭の中はどうなっているのか。 「松田さんはLに誉めてほしくてこんな危ないことをしたんですか?」 「うぅん、まぁ今のは表現上の意味なんだけどね。 誉めてほしいって言うか・・・そだね。警察官としても一応胸を張ってできると思ったことがほら、僕は極端に少ないから」 「・・・・・・・・・僕も、一応同じ立場なんですけどね」 正直、誉め言葉としての「馬鹿」を使いたくなるほど、彼の言葉は単調で明白。 自分ができることをやる。 それが実は最大の「敵」である「キラ」とどれだけ近いところにある思想かということを、おそらく彼は知らないだろう。 「全然違うよ」 けれど彼はにっこりと緊張感のない顔で笑う。 「ミサミサが月君だけ思いつづける理由とか、Lとかがやけに月君に執着した理由、僕にもなんとなくわかるよ」 「?」 「君は多分、特別なんだよ。きっと、おそらく・・・キラにとっても。 この世界にとっても」 たまらなかった。 こらえていたはずの笑いが、咽喉を焼く。 おかしい。 こんなのおかしい。 そう思いながら能天気な同僚の言葉に呼吸すら危うくなる。 だって彼は。 おそらくLやNたちよりも真実に近い。 「松田さん」 笑われている理由を理解し切れ巣に混乱している彼に声をかける。 え?と声をかけられたこと自体に驚いている顔が、やっぱりおかしくてたまらない。 ひとつだけ。 教えてあげることがゆるされたならもうひとつだけ。 今口にした言葉の完成度を上げる言葉を投げかけて見せたかった。 もう一つだけ。 退屈な死神にとっても、おそらく特別だといううぬぼれじみた真実を。 けれど口にはしない。 そのかわり、別のひとつだけを。 「僕が特別だというのなら」 「・・・・・・・・」 「キラはきっと、捕まえられるよ」 そうだねと。 信頼しきった笑みでこたえた彼に、馬鹿な子ほど可愛いってのはきっとこういうことをいうのだなとやけにリアリティをもって思うことができて、その点は感謝してもいいかもしれないな、なんて少しだけ思った。 |
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