Jo−siki・Jack!









その音は突然響いた。

土手沿いでは開けている分、遠くまで音がよく反響する。
一瞬、鳥払いの空砲かと想わされるが、そうではない。
大体、この辺りに鳥をはらわなければ成らないような畑は存在しないのだから。
その場を冷静に判断しようとする鼻には、秋の気配に絡まる、かすかな硝煙の匂い。

「先輩」
「うん。どうしよう」

端的な二人の会話は冷静なことこの上ないが、発展にも欠けていた。
秋の夕暮れ、中学生というには落ち着いた先輩後輩のやり取り。

「別に、まぁ俺たちに当たるこたぁなさそうっすけど」「だねぇ。でも、それで警察が来て海堂とのデートが邪魔されるのもイヤだしね」

あたる、可能性があるもの。
冗談めかして交わす会話には、重さが酷く場違いに。

「引渡したって充分邪魔されるとおもうんスけどね。
っていうか、デートじゃねぇし」

もっとも、デートよりも今二人がここにいる理由はしっかりしている。
もはや「しゅぎょう」とか言いたくなりそうなトレーニング。
逆を言えば、バランスを崩すと、あっという間にこけてしまいそうなほど、緻密な。

「海堂」

その中で、すでに引退をしているが「受験に必要なのは体力だよ」と知力が充分のデータ馬鹿がそっと「相棒」的な立場にありながら恋人でも在る、複雑で心地よい相手のその名を呼ぶ。
途端、まるで暗示でも用意されていたように、彼は猟犬の目になった。
・・・・・・・・いや、蛇なんだけど。

「っす」
「4時、200M」
「ふしゅっ」

小さな呼吸と、長く伸び、乾燥した草を凪ぐ音。
先に放たれたものが、果たして何の狙いを持っていたのか。
4時の方向に駆けた海堂は、果たしてその人物が「自分を狙った」ことに気づく前にまわりこみ、ふいに音を殺し、あっという間に首根っことを捉える。

「ひっ?!」

文字通り、草の中に潜んでいて、背は無防備にあり、向かってくる正面からの音にばかり集中した相手は、情けない音を立ててその地面に文字通りぶつけられた。
がしゃ、と音が立つ。
ショットガン。
モデルガンを使った、改造銃。
現在では当然、違法とされるものだ。

「んだ、てめぇ」
「お、おまえこそっ、いきなり人を足蹴にっ・・・」
「試し撃ち、か。
素人が銃を持つと性質が悪い見本みたいな奴だな」

どう考えてもテニス馬鹿中学生も充分素人の域に入りそうなものなのだが、妙な説得力を伴って彼の愚痴は形になる。
がんばれば届くという範囲、伸ばされた腕に、今度は足を振り下ろした。

「でぇええっ」

悲鳴にからまる、遠いところから響く、サイレン。
乾の仕業か。
その場から離れるために、カカトを落としてその当人を気絶させ、自分は踵を返した。

・・・・・・・・・ばれるかな?

(足跡残してあるし、ここでトレーニングしているのは何度も目撃されてるし・・・)

とはいえ、中学生が銃にひるまず向かっていく方が想像しないか。
交渉術は恋人の専門だ。そっちにまかせてもおかしくない。

先に荷物を持ってその場から離脱していた乾が、とある場所に電話をして、足跡を隠してしまえる雨を頼んだのを知るのは、もう少し後のコト。



「というわけで、だ。
このあたりで改造銃をばら撒いている馬鹿がいるらしい。
前の放火魔の時同様、また後輩の部活練習時間が削られるのはやるせない」

ので、やるぞ。
なにを、とその人物に誰が聞くまでもなく。



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