「国光」 「伯父貴」 顔を上げると、声の通りの人物がそこに立っていた。 苦笑いを口元に残した男は、大げさに肩をすくめて親戚のヒヨッコに息をつく。 「まったく、面倒にしてくれたのか、感謝すべきなのか」 「頂いた依頼は事件の解決だけであるはずですから。 手段を説明しなかったのは伯父貴のほうですよ?」 「あぁ悪かったよ」 これ以上は人目のつかないところでやりあおうか。 促される仕草に、手塚は同じ苗字の男に従った。 「大体、殆ど犯人がわかっている事件を我々に押し付けるというのはどういう了見です?」 「そこまで分かっているのなら逆に問題ないだろう。 お前が理解している通りだ」 手塚は眉を潜めた。 上等を売りとした静かな店の片隅で声を荒げるつもりはないのだが、くつくつと咽喉を鳴らす大人には不快が残る。 まったく、まだ若いということか。 自分を反省するが、顔には出さない。 出ないともいうが、血筋のせいか結局容易に感づかれる。 「むしろ俺はお前の手駒に驚くんだがな。 よくもまぁ"わかった"もんだ」 「自白させただけです。手間ではありません。 部屋がわかれば、ソコを誰が借りているか、誰が住んでいるのかを割り出すのに手間はありますまい?」 「俺たち警察ならな」 それを中学生がやったということが問題なのだと暗に言われれば、大人としては笑うしかない。 「自白させられた自覚もねぇようだったし。 まぁお前らに任せてよかったと想うよ」 「外部干渉があれば、身内の人間とはいえ隠し切れないものですからね」 警察上層部の「こども」。 玩具として押収したという改造銃やらなんやらを与えていたのが原因で、無駄な方向に成長したという。 当然のコトながら事態は大騒ぎになり、警察は連日連夜クレーム対応に追われている。 ただですら犯罪は重ねるように日々増えていくというのに、だ。 「まったく。罪を問うなら仕事をさせろというんだ」 「なら、内々に黙っているほうがよろしかったですか?」 「いいや」 これ以上、巣が汚されるのも不愉快だからな。 大掃除に受験生を利用しないでください。 「なに言ってるんだ。 受験生って言うのは基本的に掃除をしたくなる生き物なんだぞ?」 「・・・・・それが一般論なのか違うのかは私に興味はありませんが」 「そうか?」 「えぇ」 「なら、いい経験をしたと考えるんだな」 「キモに免じておきます。伯父貴」 「あぁ。とりあえず、ちゃんと例の情報は片付けておいた」 「・・・・・・」 「お前が他の人間の為に動くとはな」 「なに、ちゃんと自分たちに仕事をさせたので問題はありません」 「ふぅん?まぁいいだろう。 今までに上がっているお前らが関わった事件から青学の名は削除しておく。 特に例の宗教がらみは、後が面倒だからな」 「感謝します。一応足がつかないようにしているつもりですが、いかんや目立つメンバーなので」 「事件を解決してもらってるのに、マスコミの玩具にされるのもアレだからな。 お前らにはこれからも、自然にあくまでも偶然で事件を解決してもらわんと」 「偶然、ですか?」 「あぁ。偶然に、だ」 「努力いたしましょう」 「楽しみにしている」 ======
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