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「・・・・あの、グレーのスーツ」

「持ってた?」

「時計が、そう」

「OK」


一方乾夫婦の方も自分たちの役割に目を光らせてうなづきあった。

派手な中学生のアクションに、観客となったその場にいたほかの目は全て、目を奪われている。

マークするには楽な状況。

その内でも一種見世物以外の何物でもないような一人アクションシーンが展開されている。

今の御時世、銃を向けられて怯むのが日本人の普通だろうに、その軌道から平然と退きながら懐まで入り込み、一瞬の為のあとで渾身の一撃を大の男一人に中に浮かせるなんて芸当、殆ど人外かと思いそうだが・・・


「直線上なんだってこと位、銃口見てわかるから。そんな避けること自体は難しくないよ?」


といってまるでテニスの練習のついでのカタチで訓練してきた上、基礎体力はある意味完璧って言えるだけのことをしてきたので
、彼には日常。

この際、必要性の方は不明だけど。


「さ、て。次は?」

「調子乗ってんじゃねぇぞ、ガキ!」


冷静な海堂の声に完全に飲まれながらもそれでも銃を構える男の姿がある。

相手に通用しないなんて、信じていない。

日本人の銃信仰が無駄におかしい。


「ふっ」

「な、なにがおかしいっ?!」


震える声に余裕のなさが滲み出る。

心の脆さは、明白。


「安全装置、かかったまま」

「は?」


どういう意味だと顔をしかめ、手元の銃を見る・・・それだけで十分な時間が海堂に与えられる。この際、真実は不要。


「オーライ」


後頭部にかかと落とし、一撃。

純化されていく手際はまさに刹那のタイミングでそのレベルを上げていくかのよう・・・


「本当にお前、ガキか?」


あまりの手際とその態度に、零れる疑問は既に当然のもの。

本人にしてみれば皮肉以外の何物でもないが・・・


「ガキなんだよ、今は」


曖昧といえば曖昧。

真理といえばそれなりの言葉に、海堂は端的に答え・・・


最後の一人の腹に拳をぶち込んだ彼は、自分の義母に頭を下げた。


「・・・・・・・・制圧、完了しました」


「おっつかれさま。かおっちゃん」


殆ど場違いな物言いに、傍とこれまで全く動けずにいた人々が我を取り戻す。


「い、今のうちに捕まえておけ!!」


一人の言葉を始まりに、成人男性・・・特に店員を中心に人々が動く。

その中には乾夫妻が目をつけていた男も混じっている。勿論、動かなければ不味いことくらいは承知している、とのことだろう。


「さーこのままじゃ通常営業は難しそうね」

「ATMなら多分大学の方にもあるはずです。目的地は人気店ですから、あっちも込むでしょうし・・・」

「あ、そうね。あとは息子に任せましょ」

「もぅあの人の仕事じゃないですよ。ここまでくると」

「あ、そなの?じゃあこれどうしようかな?」


何故か小型モバイルのようなものを片手に彼女が首を傾げた。

殆どカードのような厚さのそれに、海堂は覚えがある。


「うわ。忍足さんとこの商品ですね、それ」

「あれ?知り合い?性能いいのよね、個人店のわりに♪」

「あー・・・えと。これなら大丈夫です。多分知ってる人がくると思いますから。
あずけていいですか?」

「かまわないわ」


なんで一般人が発信機を、しかも常備しているのかとか中学生で警察に伝手って、とか。

まともに聞いている人間がいたら突っ込みそうな会話は幸い当人達のものだ。


「さて。いきましょ。騒ぎにならないうちに」


充分、騒ぎだけどね。

お父さんの呟きも、勿論この喧騒の中に飲み込まれ・・・











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ぬふふ〜
あと一話。
やっと旦那が出れますよー(笑


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