「で。篭城戦やってんの?不二たち」
「あぁ」

英二の問いは微妙に違う気もしたが、一応間違っているわけでもない気がした乾はその言葉を肯定した。
もっともそんな話では、海堂がかわいそうだ。完全に単なる巻き込まれなのだから。

「ジャーナリストってなら千ちゃんの仕事じゃーない?
なんで同じ職種でも頭にスポーツが付く手塚がやってんだよぅ」
「引き受けたからだろ。
手塚だからな」
「うぁ、説明として正しすぎ」
「そんなわけだから。あんまこっちこない方がいいぞ。巻き込まれる」
「りょーかい」

電話を切った乾は一つため息をついて東京…警視庁から届けられた資料を見た。
ニュース等の報道にはなっていないが、実際に起きた日中の狙撃・・・というより、襲撃事件のものだ。

始まりは一台の事故車。
とあるマンションの壁に激突したところを通報されたのだが、パンクしたタイヤの滑った痕跡のところに弾痕がみつかった。
ついでに、車の中からも物騒な代物がいっぱいみつかった。
そんなわけで警察は周辺のマンションを絨毯作戦でしらみつぶしに調査し、一軒の家があからさまな襲撃にあった痕跡を目撃する。
しかもその家主…住んでいるのは二人の男性・・は行方不明。
ただその二人の名前をたまたま知っている人間が警視庁にはいて、なにかややこしいことに巻き込まれた等の発言があったことも語ってしまっていて、つまるところ「え?それヤバくね?」という状況に。
そんなわけでその「知っている警視庁の人」は警察に協力しているとして一部に有名な大学准教授の自分の下へと情報を送ってきたのでした。どとはらい。

幸い調査された彼らの部屋自身から危険な代物は一切出てこなかったらしい。
それはそうだ。
襲撃犯を「撃退」した家主たちは、調べられたらものすごく拙いそれらを全部神戸に送っちゃったのだから。
で、わけがわからない英二が不二と連絡とれない!とかけてきて、現状説明。が、終了したところで、今ここのところ。

あぁ巻き込まれている恋人は、今どんな状況なんだろう?



とか乾が想っているタイミングで、海堂はH&K G3を構えたところだった。
西ドイツで創られた、アサルトライフルである。
使っている弾の割りに反動が少ないので、正確さを要求されながらトリッキーな攻撃を主とする海堂は気に入っていた。いや、テニスの感覚をこっちにまで持ってくるのはどうかという話だが。

息を殺し、気配を探る。
こんな殺気を放っていれば逆に自分を見つけてくれといわんばかりだと分かってはいたが、そこまでのプロでいようとしたことは誓って一度もない。
っていうか、必要ないから、こんな技術。
それでも跳ね返ってきた殺気に咄嗟に引き金を引いていた。
勿論あてない。ほんの少しだけずらすのがポイントだ。

2日目になるが、この引き金も、何度目だろう?
反撃を考えていなかった連中のおかげで、ぽつぽつとした攻撃しか来ないのだが、そろそろ大挙して押し寄せてきてもおかしくない。
時間は、もうなさそうだ。

「・・・部長。そろそろ終りませんか?」
「そうだな。そろそろ」
「はい」
「当人をぶん殴ってくるか。したくしてくれ」
「はい?!」

同じ単語なのに、全く違う意味を伴って言葉を発する。
酷く奇妙なことだとそうおもったが、どうにかなるはずもなく。
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手塚が何を考えているのかが一番の謎(今更




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