英二はいつものように笑顔だったけれど、どこか困ったような顔にも見えた。
どうしたの、って抱きついてきたからだを支えながらきいたら、よくわかんにゃい、とよくわからない返事が帰って来た。
どういうこと?

「あ、ためしてい?」
「なにを」

って聞いた途端、キスがきた。
あの、英二。ここ、一応駅のど前なんだけど…

「にゅー」
「・・・・・・・はっきりした?」
「うん。こっちは問題ないみたい」
「問題?」
「そ、ちゃんと、甘かったけどね」

いこ、おーいし。
にっこり笑って、手を取られて。
勢いに負けて、結局、なにがなんだか聞く暇はなく。
あー、まぁ、周りの人たちは、いつものことなのでこの際、向こうで無視をしていただく方向で。


今日のコースはサイクリングロード。
深い意味はなくて、久しぶりに自転車に思いっきり乗りたい、というわけらしい。
実際学校の行き帰りは徒歩だし、遅くなるまでクラブの俺たちはその気にならないとあまり乗る事は無い。
とはいえ結局体育会系。
のんびり雰囲気を楽しみながら、とはいかず、気がついたらサイクリングロードはさながら競輪場と化していた。
ふたりとも、とりあえず相手よりも数歩でも先をという意識の方がすごくて、まぁなんというか幸い他に人がいない時間でよかったというしかなく。

もっとも二人ともこうなることの見当はついていたので(……)最初から「休憩」の場所は決めてあった。
結局、着いたのはちょっとだけ俺が先、だったわけだけど。

「はふっ」
「ふぁーっ、きっつ」

実際、自分たちが乗っているのはどちらもママチャリってやつで、そんな全力で踏み込んでも疲れるだけだってのに、不思議なもんだ。
ちょっとした川沿いの公園って感じの場所で二人で座って、つくってきたーwという英二の差し出したクッキーと、俺が用意しておいた紅茶を口にする。
とは、いえ。

「あれ?英二」
「うん」
「クッキー、食べないの?」
「え。なんか焦げてた?だいじょぶ?」
「いや、おいしいよ」

おいしいけど、大抵は英二も食べるのに。
首を傾げたら、にゅー、と彼は首をかしげた。

っていうか。

「どうしたの、ほんとに」
「いや、それが」
「うん」

「大石は、へーき?」
「えーと、英二さん?それはコレがなんか実はヤバイものってことですか?そうですか?」

ちがうよー、大石にそんなの食べさせるわけ無いじゃないかーっ!と逆に怒られているんですけど、ほんとになんなんだ?

「えーと、な」
「うん」
「まぁ、見てもらった方がはやいかな」
「なにを」

いただきます、と言って、英二は自分のクッキーを口にした。
んみゃい、えーじくんてんさいっ、と自己評価したあと、ふぅ、っと大きくため息をついた。
表情はころころ変わる子なのはわかってるけど、なんか今日のは酷く不思議。
どうしたの?

「えーとね、おーいし」
「うん」
「ちょっとごめん」

そういうと、英二は一度立ち上がって、俺に抱きついてきた・・・、と想ったら、俺の視界に変化ができた。

????

「・・・・・・・・・え?」
「こんな、感じ」
「・・・・・・・・・・・・・・なにがあったの?」

さっきまで、英二は俺に、ちょっとした持久力のレベルで負けた。
体力もないわけじゃないけれど、基本的に力技っていうタイプじゃない。
じゃないんだけど。

「なんで、えーじが俺を片手で持ち上げて尚且つボールみたいに構えてるのかな?」
「いや、投げるってことはにゃーけど」
「うん」

「とりあえず、伝わった?」
「もしかして、甘い、の?」
「みたい」

どうしようって、コレもドーピングってことになるのかな?一応、俺たちはスポーツ選手なわけだし。


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体育会系ラブコメ(今回のテーマ

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