06 俺より少し年上らしい少女の前で、英二曰くの「妙な帽子でヒゲで、豪快でいかにもオレ様っていう感じで、人生全力で楽しんでます、って感じのふぁんきーって言葉を思い出すじーちゃん」が平謝りしていた。 それこそ、地面に頭をこすり付けん勢いで。 「まぁなんちゅーかじゃな、おちゃめとか感謝とかそんな方向での」 けどまぁ妙なこともいってて、見下ろしている形になる彼女がおもいっきり睨みつけていて。 「謝ったってどーなるもんでもないでしょぉが?! あんたが秩序乱してドーすんのよっ、あんたがっ」 「おねーさん、でもじーちゃん悪気ないって」 「悪気の無い悪戯心に命かけさせられたのが一回や2回じゃないから怒ってるのっ! 立場をわきまえなさいってーの」 「んなこと言ってもわしは引退した身じゃしのぉ どーじゃ?少年。能力は」 「あまいもん食べれない事実に凹んでる」 「ほらみなさい!」 糖分なしで生活することの難易度ってやつを! 正直な英二の言葉に彼女が乗じる。 その後ろで、ジュースを呑んでいる小林と名乗った男の人と、植木と名乗った、やっぱり説教の彼女と同じくらいの男の子がまったりと彼らを眺めている。 なんていうか、いつもの光景? 「ふむぅ、難しいもんじゃのぉ」 「いらないものだって認識が先なの。 ちがうかな、不要なんだって」 「じゃが、誰だって戦うときは在るじゃろ」 「戦うその時に、持て余す力は護りたいものまで傷つけかねないでしょ。 必要ないのよ、それにね。 たった一人にだけ頼りかねない戦い方は、きっと辛いわ」 静かに、穏やかに、ゆるく、ゆるく。 彼女が告げるのは、まるで子どもに向けているようだった。 となりの英二と目線が絡む。 「戦う?」 「そういう時は、俺も、だけどね」 「うん。知ってる」 「つまりジジィのやったことは、中学生に余計な旅費を払わせて困らせたってことだな、大体」 「・・・・・つめたいのぉ、小林。 元々はおぬしが迎えに来てくれんか・・・」 「アホかてめぇ?!」 「元神のじーちゃん、あんまりコバセン困らせると、俺も森と一緒に怒ることになるぞ?」 くしゃ、っと植木くんの手のカップがつぶれる。 あれ?中に入っていた氷って、クラッシュアイスだったっけ? 「・・・・・・・・・申し訳なしに」 元神、って珍しい名前で呼ばれたおじいさんが今度こそがたがたと震えて謝った。 なんか不思議な感じだ。 「とにかく、迷惑かけたわね、しょーねんs。 いかんせんこの常識なしが」 「んー、でも大石と電車とか、めずらしーことできてちょっとうれしかったw」 「・・・・・あっそう? じゃ、元神」 「わかっとる。能力の回収と・・・ 詫び、じゃな」 「じじぃの侘びなんてなぁややこしくなるだけだろ」 「おでん?」 「お子様を深夜の営業にご案内するのもなぁ。 ま、ちゃんと送ってやるべきだろ」 「ふむ」 「ついていった方がいいかしら?」 「また迷子で同じ展開の繰り返しは、ちょっとな」 「随分大所帯になったな…」 「だねぇ」 「ま、少年、ちょっといいか?」 「ふにゃ?」 「いや、一応、回収に」 「あ、うん。 こまったよぉ、結構甘いもんてふつーに周りにあるんだもん」 「そうじゃなぁ すまんかったの、少年」 「んっ」 ほんとにごめんなんだからねっと英二が胸を張った。 その英二の前に、元神さんが立って、ちょっとその手を額に翳す。 「?」 「回収終了じゃ」 「おっけ」 「え?もう?」 「ほい、しょーねん」 ぴん、と彼女からなにかがはじけた。 きょとん、とした英二は油断してその口の中になにかを受け入れた。 「・・・・・・・・・・あめ?」 「うん」 ころり。英二の口の中が、音を鳴らす。 みんなが見守る中それを食べ終わった英二は、がばっ、とオレに抱きついてくる。 ちょっと、勢いよく。 「っつ」 「ふにゃっ?!おおいし。いたかった?!」 「ん、大丈夫。 ちょっと勢いが、ね… 大丈夫、いつもの英二だよ」 「にゅっ」 向こうで、森さんが大きくため息をついた。 ・・・・・・友達同士がじゃれてる、って感じじゃ、やっぱない、かな?これは。 |
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