隠しSS:03 Wteachers+ばけぎゃ。
       16,500Hitリク続き前提。(でも一応コバ植)











夏休みともなれば、職員室は一気にその人口密度を失ってしまう。
今日みたいに、日直とプール日直だけなんてもの、そう珍しくない。
しかし少し遅れてきたプール日直の赤野の背中に見慣れないものを見て、小林は間の抜けた呟きをこぼした。

「なんだぁ。そりゃぁ」
「なにって…行き倒れ、だな」
「って。おいおい、めっちゃガキじゃねぇか」

いや、それ以前にあっさり一言「行き倒れ」でまとめるのもどうかとは思うのだが、ろくろくな感想が出てくるわけもなかった。

「まぁそうなんだけどな」

実際、拾ってきた方も何を言っていいのかと少し悩んでいるようですらあって。
その調子に呆れつつも、小林はガキといった・・・実際せいぜい小学校高学年ぐらいの少年だ・・・行き倒れの為に、いすを組んで簡易ベットをつくってやる。
赤野がそこに彼を横たえると、ぐったりとした顔が露になって、小林の琴線を不意に鳴らした。

「う、ん?」
「どうした?小林」
「いや・・・そーいや保健室にアイスノンあったよな」
「あぁ。今もって来る」
「おぅ」

言葉を濁した小林に、しかし赤野は深く突っ込まず、やることを選んだ。
彼の足音が遠くなるのを確認してから、ぽつりと残った男は意識の薄い子供の方へと、子供相手にはならない呟きを投げかけた。

「で?どーすんのかなー、御守役殿は」

ずるり。
ふいにその姿が少年の影から「出現」し、ひょいと肩をすくめた。

「人聞きの悪いことを言う旦那だな」
「人じゃねぇじゃん」

小林のものよりも抑えられた銀の長い、癖のある髪。
夏には迷惑とすら訴えたくなる黒い服と、紅い瞳。
人外とわかる、その姿は本来なら人には見えないのだというが・・・

「・・・なんつーか・・・
どうもこうも。俺のできることなんて限られているんでね。
ちっと休ませてもらえりゃぁ、兄ちゃんもすぐ回復するだろうけどな」
「了解さん」

わかった。休ませておく。
そうと返したタイミングで、不意にがらり、と扉が開いて、同僚が不思議そうな顔を出した。

「誰か着てたのか?」

いい耳してるな、おい。
赤野の問いに内心だけで苦く笑い、しかし小林は平然と嘘をついた。

「いや、でんわ」
「ふぅん。ほい、アイスノン」
「のっけてやれよ」
「・・・ダンドー以外の看病なんてしたことがねぇんだがな」

どういうつもりなのかそんなことを言ってきた同僚に、けっ、と小林ははき捨てる。

「アホな惚気に用はねぇよ。看病させてもらえねぇオレよかマシだろ」
「さえてもらえねぇ?」

なんだ、そりゃという反応はまぁ自然だったが、聞かれたついでに愚痴る。

「俺に任せると治るもんも無駄に時間がかかる悪戯かますと思われるらしーぜ」
「森か」

コレだけで誰が言ったかわかるというのも変な話だが、既に彼らの中のある種の常識なのだから仕方がないといえる…かもしれない。多分。

「切ないよなぁ。っつーわけで拾ってきたのはお前なんだから投げるな」
「へぇへぇ。
っかし、特に荷物もなかったようなんだが・・・
どうしてまた行き倒れなんだか。拾った時にはなにかと思ったぜ」
「あー、まぁフツーいねぇわな」
「だろ?いくら夏だってさ」
「ホント。なにやってんだろうなぁ」

誰に言い聞かせているのかと、赤野は少し気になったようだったが、何か言おうとはしなかった。
新たな来訪者に、いえなかったとも言う。
ろくなノックもせず、3つの足音が飛び込んできたのだ。

「拓せんせー」
「コバセーン」
「餌よー」

大荷物を担いだ恋人達の呼び声は問題ない。
しかし、聞きなれたといえば聞きなれたが、あまりと言えばあまりな最後の少女の言葉に、大人二人は脱力した。

「てめぇ、森。女の子がそーゆー言葉をだな」
「て。そっちなのか」

説教のスポットが予想外で赤野が反射声を上げたが、子供達はそんなコントより、見ず知らずの人影の方に自然意識が向かった。

「…て、あれ?」
「誰と?」
「あぁ。拾った」
「ちょっ、青田刈り?!」

首をかしげる植木とダンドーの当然過ぎる問いへの返答に対する、特に少女の言葉は洒落になっていなかったので、さっき止めたはずの赤野も同じ言葉が口についた。

「森、お前だからもうちょっと女の子なんだからな。一応」
「一応な」
「で?」
「だから行き倒れだ。人命救助」

だからなんらやましいことはないと暗に大人たちは主張し、その恋人達はほっとしたような、何の気なしのような顔で改めて見知らぬ少年へと目線を向けた。

「そうなんとね」
「ふぅん・・・あれ?こいつどっかで見なかったっけ?」
「あ?あぁ。遊園地だろ」

小林が植木の疑問をあっさり一蹴した。
きょとん、とした植木の隣で、何故か森がぽん、と手を打った。

「あぁ。この前の!」

って。なんでいなかったお前がその台詞をいう?
小林は流石に顔色を悪くして、ちらりと恋人を見た。

「植木。お前まさか森に逐一報告してるんじゃねぇだろうなぁ、をい」
「いや。レポート書かされて・・・
あぁ、そうだ。また腹ヘリか?」
「はなし反らしやがったな・・・
まぁいい。暑さにやられたらしいな」

寝てりゃ治るんじゃねぇ?
続いた言葉に小林はあっさりとそういったが、その無責任な発言を森が否定した。

「ちょっ・・・うわ、熱あるじゃない!この子!
熱射病?大の大人の癖にどんだけ放置プレイよ。
あー植木扇風機こっちに向けたげて。
青葉、水・・・じゃない方がいいかな。
冷蔵庫にスポーツドリンクは言ってるはずだから、一対一で薄めて」
「おぅ」
「わかったと」

あわてて指示を始めた森に、指示された植木とダンドーも殆ど反射で動き出した。

「1:1って味なくねぇ?」

放置された大人は間の抜けた声でそんなことをいった。
どこまでも危機感のない大人たちに、森は目を吊り上げて指を突きつける。

「っていうかそういう場合じゃないの!
それにまんま水もだけど、この状況じゃ普通のスポーツドリンクも濃すぎるのよ。
せんせーはどっちでもいいから、この子の服緩めてあげて。慣れてるでしょ」
「馬鹿いうな。ンなことしたらのろわれるじゃねぇか」
「誰に」
「あの影のおっちゃんか?」
「そーゆーことだ」

植木だけが小林の言葉に納得した。
どうやらその件に関しては森のレポートに書いていなかったらしい。
いらただし気に声を荒げる。

「だから、誰」
「まぁ。色々とな」
「副業関係?」
「さて」

曖昧に濁されたそれを、部外者のいるこの状況で彼女も蒸し返しはしなかった。
本来公務員は副業を許されていない筈なので赤野とダンドーはやりとりに顔を見合わせたが、それを何らかの形になる前に森が思案顔になった。

「まぁいいか。でもできれば脇とか足の付け根とかも冷やしたいのよね・・・」
「っとに詳しいとね、森」

ダンドーが素直に感心すると、まぁね、と彼女も頷いた。

「応急処置はそれこそ限界まで勉強したからね」
「ふむ・・・対応しなきゃならんとなると・・・
聞いてるか?影の旦那」

不意に小林が誰かを呼んだ。
誰を示すかわかる人間は、当然一人しかいない。

「つまり?」
「ま、ちょっとしたマジックショーだな。オレと植木以外からは」

だから小林は、ひたすらわかりずらい返答を返してみせた。
詳しい説明をしたところで、見えなければ意味がないのも事実だったといえるだろう。
少年の服が、誰の手にも触れられずにくつろがれていくし、赤野が再び持ってきてダンドーがタオルを巻いたアイスノンは、宙をふよふよと浮いて、森の指示したあたりにそっと置かれた。
充分特撮映像である。

「どこがちょっとした、だよ」
「まぁいいじゃねぇか」

赤野の突っ込みは最もだが、やっぱり小林は説明を放棄した。

「まぁ、やってんのは、まぁ御守役だけどな」
「あやしーなぁ」
「うるせぇよ、森。で?どーした方がいーんだ?」

見えない誰かがやってくれるぜ。
そういうと、驚くことに離れている森は、けっこうあっさりとした態度でうん、と頷いた。

「それこそあとは充分、休ませるだけよ。
コップの水、少しづつ飲ませながらね。
あ、多分零れるからタオルで口元押さえてあげて。
こっちはごはんにしましょ。とりあえず」
「おぅ。今日なんだ?」

見えない人物に指示した後、することがないならと、本来子供達が来た目的を果たすべき意識に向かった。
何気に人がいない時を狙ってのこういうイベントは、この面子では意外に珍しくなかったりもする。
本日のシェフである植木が、持ってきたクーラーボックスを開けながら胸を張って宣言した。

「お好み焼き!佐野からレクチャーしてもらった本格関西風だ」



その声が聞こえたのは、学校備品のホットプレートが一息ついた時だった。
むっくりと起き上がった少年が、ぽつりと呟いたのだ。

「めし・・・」
「あ。起きた」
「ん、起きた。誰?どこ?」

まだ寝ぼけているのか、曖昧な問いが少年から零れる。
答えたのは植木だ。

「人間界の日本で中学校の職員室で、教師と生徒」
「がっこで、おこのみやき?」
「食うか?今焼いてやるな」

ぽかんとする子供に、ちょっとだけ年上の子供が優しく声を掛ける。
心遣いに、予定外のゲストは嬉しそうに笑った。

「おぅ。ありがと」
「ちったぁ警戒しないかね、兄ちゃん」

その少年・・・三志郎の耳に、本来は彼以外には届かない声が聞こえる。
助けてもらっておいて、と聞こえてしまった小林が苦い顔をして見せたが、幸い調理作業の植木には聞こえなかったようだ。
そして三志郎もへら、っと胸を張った。

「大丈夫。不壊がオレを危ないところに放っておくわけないじゃん」
「妖逆門は充分あぶねぇんだけどなぁ」

その結論も兄ちゃんらしいっちゃーそうか。
ぐったりとしている個魔に、けれどけっこう無頓着な子供はふとホットプレートを囲んでいる面子の内二人に目を留めた。

「あれ?おっちゃん達どっかで見たな?」
「今思い出したのかよ」
「うん・・・二度目だな。ありがと」

どうやら説明がなくても、自分が彼らに助けられたことは悟ったらしい。
素直な感謝に、しかし本来助けたわけではないはずの小林は偉そうにいう。

「おぅ。せいぜい感謝しろよ」
「神様に?」

おぉ、覚えてたかと、勿論いえない言葉を目線だけで告げたオトコは、にやりと笑って見せた。

「オレ様に、だ」

「どんだけえらいんだよ」
「神様よりでしょ。自称だけど」

赤野の呆れた言葉に、すかさず森が切り返した。
それが聞こえて、植木が作業の手を止めて噴出す。

「ぴったりだな、森」
「そ、そうなん・・・?」

ダンドーが流石に、ちょっと悩みながら、ほんのちょっとだけ首をかしげた。

すいませんごめんなさい遊びました。
どんどん読む人には優しくなくなってまいります(あぁあ
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