注意書き このお話は サイト:帽子屋M's roomさま の 隠しページ「ホストクラブ:Versuchung」シリーズにおける ・・・昼〜引き受ける覚悟の「Versuchung」・・・ とリンクしています。 拓さんがバイトホストでコトあるごとに呼び出されています(笑 ・・・・・・・・遊びすぎました。ごめんなさい(でも上げるのか 当初日記BBSにあったものを加筆・修正しています。 夕方〜夜:緊急代理の「Versuchung」 彼らはソファでくつろいでいた。 さっきふたりで食べた夕飯も程よくこなれてきて、あぁお茶でも入れようかなぁと想って、自分を緩く抱きとめていた恋人の腕をキスを送りながら立ち上がったダンドーは、そのタイミングを計ったように鳴った電話に、素直に受話器をとった。 「こい」 「へ?」 はい、とそれを言う余裕も無かった。 唐突の電話は、名乗るどころか相手側からも名乗りもせず、まるで脅迫のよう。 きょとん、としたダンドーはあとからわたわたと「あの、どちら様でしょうか?」と困ったように声を上げると、あ?お前さん嫁の方か、とあっさりとした声が聞こえてきて、その軽い口調にやっとその人が自分も知る人物だとようやっと悟る。 「小林のおっちゃん?」 「おっちゃんいうな。旦那は?」 「拓さん?拓さんなら…」 ちらり、とダンドーは小林、という恋人の言葉に、さっきまでの雰囲気を一掃して全身で警戒している人物を見た。 余計なことは何も言うな、という気配はよくよく伝わっていたが、その相手に対して、ダンドーはにっこり笑ってその目を見ながら、無情に電話に話しかける。 「すぐに行った方がよかと?」 このタイミングでかけてくる電話の理由は、初めてでもないので容易に悟ることが出来た。 話が早い、といわんばかりに、電話越しの男があぁ、そうしてもらえると助かる、といってきた。 「ちょ、おい!ダンドー!」 「わりぃな。ナンバー1がしけこんじまって。 人手がたりねぇんだ」 「はぁい」 じゃぁ。 声を上げた赤野を無視して、完結した話題を告げるように回線が切れる。 殆ど受けたことが無いはずの恨みがましい目を受けながら、ダンドーはその目の主に、いつもの晴れやかな笑顔をむけてみせた。 「拓さん。助っ人やて」 「・・・・・・・・・・冗談じゃねぇぞ」 赤野はこの助っ人を嫌っている。 いけばそれなりの仕事をするのだが、いくまでの抵抗が強い。 理由は簡単だ。 ホストなんてのは、甘い言葉を吐いて何ぼの商売だが、赤野にとってそれを言いたい相手は正直、ダンドーしかいない。 他の人間に(それがうわべだけのものだと、お互いがわかっているとしても)言うとなんだか勝手に裏切ったような気分になってしまうからだ。 勿論ダンドーは毎回、そんなことでは怒らない。 ただ「困っている人を助ける」という判断が、ダンドーの行動理念になっている。 「大丈夫と」 「なにが」 「帰って来たら、女の人のこと忘れるぐらい、いっぱいぎゅーってしてあげるとよ」 冗談めかした口調で、どこか子供めいた言葉を投げて、子供みたいなふくれっつらの恋人のご機嫌を取る。 「ぎゅーだけか?」 「まさか」 ほら、わかったら支度支度。 色々と他の言葉を欲しがった赤野の言葉にダンドーは期待を持たせる否定を口にして、さっさと奥のクローゼットからスーツを取り出してくる。 そう使うわけではないそれをスムーズに取り出して、しかも渋る旦那に着せてやってネクタイも手際よくかけてやる。 まったくいい嫁さんもらったもんだと想いながら、ふと赤野はなんだってこんなに協力的なんだと疑問に想う。 ホストクラブなんかで助っ人とはいえ仕事をしてくれば、帰って来る頃には酒と女の匂いがいやがおうにも残るというのに。 「なぁ、ダンドー?」 「だってね、拓さん」 「うん?」 「時々こうして、拓さんがやっぱりオレのがいいって思ってもらえたら・・・ それってすっごく、勝った気にならん?」 はい、できた。 馬鹿正直な恋人の絶対負けないという確信宣言と共に、赤野は腹を括るしかないわけで。 「おら!きたぞ!」 そんなわけで機嫌が悪い声を上げながら従業員入り口のドアを開けると、どこか他俳的な雰囲気をまったりとかもし出す店内の雰囲気はいつもどおりだった。 カウンターの奥にいる顔見知りのバーテンが、あ、赤さん、と声をかけてきた。 その声に軽く手を振って挨拶に代えたあと、オレを呼び出した張本人はどーした、と殆ど脅迫まがいに問いかけると、コバさんなら今接客中です。とあっさり返ってきた。 不壊さんが抜けちゃったんで、ナンバー2にかかる声が当然集中しちゃいましてねぇ、と愚痴なんだか面白がっているんだかよくわからない。 「そこだ。不壊ってあのホストが天職みたいなにーちゃんだろ? そうそうサボるとはおもえねぇんだけど?」 でも、本命と両思いになったら、そりゃ男なら仕事は無視でしょ? ましてや延々と片思いで、その上据え膳の上、うちの裏ナンバー1にけしかけられたとあっちゃぁ、我慢できたら尊敬の域ですよ。 そりゃ仕事なんてやってけませんて。 からからと笑うバイトに、赤野はなんとなく、裏ナンバー1が誰であるかを悟った。 同時に、あれ?まだあいつら出来てなかったのかよ?と正直驚く。 しかもタイミングよく、あ、ゴルファーのおっちゃん、と件の人物が声をかけてきた。 「出た」 「なにが?」 「いや。なんでもない」 「さっさと仕事はいって、コバセン開放してやってくれ」 「へーへー。お前ほんとに小林以外どうでもいいとこあるだろ?」 「そんなことないぞ?」 愚痴にも似た赤野の言葉に、不思議そうに植木は首をひねった。 心底心外だという調子は、しかし赤野からすればこの上なく信用が置けない。 「三志郎がちゃんと学校これる位に不壊が理性のこってくれているかとか、ダンドー寂しい想いさせて悪いなーとか」 「・・・・・・・・・・・・そーかよ」 けど優先権は、小林なんだろ?と切り返すと、なんであそんな当たり前のコト聞くんだ?と植木は首をかしげた。 ・・・あー、もぉ。 「いってくるわ」 おつかれ、とバーテンが送り出してくれたのが、なんとなく泣きたくなった、なんて赤野には一生の秘密だ。 |
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