「絶対可憐チルドレン」パラ
ただし色々捏造とか俺都合話








絶対可憐ミドルレン

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                   SIDE ; 1/3

 00

果てして世界はどこにいこうとしているのか。

少女、森は自分がつと思った言葉をそのまま、目の前のパソコンに打ち込んだ。
勿論、チャットでもないし掲示板でもない、ただのメモ帳の枠に書かれたそれに、返答など返ろうはずも無い。
少なくとも現段階で、その答えを書けるような「能力」はここ、B.A.B.E.Lにも報告されていなかった。

超能力、というものが、使えるものつかえないもの、ついでにそのレベルは様々なれど、この世界に存在する。
ここにいる以上、そうではない世界を空想することなど不可能で、まぁぶっちゃけるとそれが日常で、森が学校の傍ら所属しているここも、そういう人々・・・エスパーを保護し、研究し、そして・・・・利用する機関だ。
こういう言い方をすると誤解されがちだが、実際誤解している人々がエスパー排除を声高に叫んでいるのも事実である。
その人々を、超能力によって排除しているのも。

「はぁ」

そして、その排除の片棒担いでいるのが、ほんの数ヶ月前までただの高校生でしかなかった、若干未成年の森なのである。
別段、彼女は頭が良い訳ではない。
ただ彼女にはここにいるだけの価値のある「超能力」があった。
超能力、といっても、大分特殊な部類に入るものを持っているもので、彼女自身に、実は自覚が無い。
コントロールの訓練が無いわけではないが、大概が感情に任せることになる。むしろそっちの方が、確実に彼女の能力が発揮されてもいた。

実際、あんな連中に冷静に物事を説いたところで、話が通ずるものか。

彼女はその目線を、ため息と、答えのない疑問の原因たる相手どもに投げてやっぱり遠い目をした。


 01

彼女にとって、それは突然の出来事だった。

「え?」

いつもの帰り道。
いつもの歩幅。
いつもの時間。

いつもの曲がり角に。

見知らぬ対峙。

「へ?」

じゃき。
機械音が聞こえた。
それの先が自分に向けられていると知って、体が固まる。

「特務エスパーか?!」
「えぇええええ?!」

いきなり自分を、名前は知っているがあったコトは無い、そんな存在に間違えた、あくまでふつーの格好のふつーの髪型の、なのに何故かサングラスをかけた相手・・・・×20人ほどの集団に森は絶叫した。
当たり前と言えば当たり前の反応。
特務エスパー。
色々なトラブルを、超能力によって未然に防いだり、回避したり、解決したり・・・・時々悪化させたりする、政府嘱託の機関に所属する、高レベル超能力者たちの、畏怖と尊敬への綽名。

勿論、森はそんな立場の人間じゃない。

「あの、なにか勘違いを・・・」
「特務エスパーじゃなかったらこんなところにくるもんか!そうじゃなくてもエスパーだからここに来たんだ!エスパーじゃねぇヤツがここにくるかー?!」
「どんなりくつよぉおお」

大体立ち入り禁止も進入禁止もなかったというのに。
機械・・・銃口だ・・・ を向けられたと言うのに、森は殆ど本能でツッコミを入れていた。
勿論、その後に投げつけられるのは強い殺意だ。

「とりあえずエスパーはしねぇえええ」
「だからちがうってぇえええっ」

ツッコミ気質とはいえ、普通の女のこだ。
思わず絶叫してしゃがみこんだ森は、しかし身体に覚悟した衝撃が来なくてしばらくしてから、そろぉり、と目を開けた。

銀の疾風がすくり、とそこに立っている。

「え?」

モカ色のスーツを着た、成人男性の背中。
その向こうに、なにか空気の波紋のようなものが踊っているように見えた。

「え?」
「植木」

ぽかん、とした森の呟きに、男のそれが重なる。
低く落ち着いて、なのにどこか・・・計算高い気がする不思議な声が口にしたのは、知らないわけではない名前だった。

「コバセン」
「植木?」

しかも、聞きなれた声。
振り返った先に、覚えのあるクラスメイトの緑頭。
駆けてきたそいつは、森を観ることなく、先に自身を呼んだ銀の人物に目線を投げている。

「植木。許可を」
「おぅ」

謎の言葉に応じ、植木が取り出したのは携帯だった。
もはやどうと理解していいのか分からず立ちすくむ森の目の前で、植木が何やら手順を踏まえる。

「コードネーム"ロキ"、解禁!」
「おぅ」

声に応じ、男が応じるのと同時に、なにか、すごい風圧が森を襲った。
少なくとも、風だと感じたのだが、それも正直疑わしいような気すらしてくるのは何故だろう?
もしかしたらその後に聞こえてきた台詞そのものが原因か。

「さいきっくぅううっ!もぐらたたきぃいいっ」

正直ツッコミどころの絶叫の直後、我に返った森の周辺で、先ほど見渡した謎のふつーに妖しい人物が残らず目を回しているのが見えた。

「大丈夫か?」

形だけという印象が聞こえた男の問いに、森はえーと、とぼんやりしながら、ぽつり、と答えた。

「・・・・・・とりあえず、一気に片付けるのはもぐらたたきとは違うと思うんだけど」

勿論、現実逃避である。


 02

「大丈夫か?森」

クラスメイトに声をかけられて、やっとわれを取り戻す。
あ、うん。きりかえすと、よかった、と嘘ではないとわかる声が聞こえた。

「あんた、いったい・・・」

いや、正確に言うのなら、彼ではなく、彼が「許可」してどう見ても超能力以外の何者でもない能力を発揮した男に聞くべきかもしれないが・・・

「俺はコバセンのパートナー」
「あ?」
「俺だけが、コバセンの超能力リミッターを解除できるんだ」

彼は説明しているつもりなのだろうか?
違う気がする。いや、少なくともこちらから観る限りは説明には聞こえない、と言うのが正しいのかもしれないが。

「はい?」
「あー、植木。誰だ?」

いや、それ私の台詞。森は男の声に、そう切り返そうとしたが、その前に植木が答える。

「クラスメイト、森」
「そうか。BABEL所属の特務エスパーの小林だ」
「はぁ」

よろしく、とは続かなかったが、名乗られたからには仕方が無い。森も言葉を切り返した。
だがそのあと、彼女は聞きたくなかった続きを耳に拾ってしまう羽目となった。

誓って言うが、聞くつもりは全く無かったのだが。

「植木は俺のもんだから、手は出すなよ」
「いらんわぁああああ?!」


 03

「あんたバベルなんかに所属してたの?」
「んー。コバセンにナンパされてそのまんま担当にさせられた」
「・・・・・・・」

本人はなんら不思議ではないと言いたげに言うのだが、森はぐったりした。
不思議ってレベルじゃない。
これは犯罪じゃなかろうか?

「で?そっちのオッサンはなんで植木に声をかけたの」
「そりゃあれだ」
「どれ」

「俺の欲しかった正義を、こいつが持ってたからだ」

ぎゅぅ。
ほえ、っとした雰囲気が日常の植木を後ろから掻き抱いて、にやり、と男が笑う。
え?なにその納得不可な主張。

「・・・・・・で?そっちの組織がこの辺でこの周囲に散乱する変な人たちがなんかやるかもーっていう話でこっちに来たのかしら?」

予知能力者・・・プレコグ、とかいったか。
そういう人たちがお抱えでいっぱいいると聞いた。
秘密組織の割に、存外色々有名なのは、彼らの目的があくまでも一般人と超能力者の相互理解を掲げているから・・・らしい。もっとも、ネットで見かけた程度の話題だが。

「あぁ。テロ組織"普通の人々"がこの辺で超能力者選別の網を張ってそれに通った人間片っ端から片付けるっていう、無茶苦茶な企画を立ててなぁ」
「どこがふつーなのよ」
「いや、でもそれが組織名だから」

迷惑な。
そう考えてから、あとであれ?と森は首をかしげた。

「・・・・超能力者が、かかる、網?」
「あ。そういえば森。お前なんでいるんだ?」

・・・・・・・・・・

「なんでかしらね・・・」

しらんわ。ぶっちゃけた話。



そんなわけで、不本意な展開を経て彼女はBABELとつながりを持った。
その中で能力を知り、それを訓練することを自分で選んだ。
ただどうしてここの所属になったのかだけが、彼女にとってはもっすごい謎だったわけだが。

それが途方にくれていた目の前の原因である。
BABEL第3分署、通称「ヘルヘイム」
北欧神話において、よりによって「死の国」と名付けられるこの部署は、ある意味で悲しいくらい、ぴったりなわけで。
いや、あくまで森からみれば、だが。

部署に所属するのは3組の「超能力者」と「許可者」のチーム。に、+森。
バベルの中でも最強。
しかも3人が3人とも、国内では5人といないと言われているレベル7という殆ど奇跡の部署。
が。

「なに?超能力って、レベルに反比例して変態性が高まるわけ?」

・・・・・・・・そんなことはない、はずだが。
彼女の主張は何気なく、知っている人間いはすごく納得させられたはずだ。


 04


「佐野君、りんご剥けましたよ」
「食わせて、ワンコ」
「え?」
「食わせろ」
「あの、なんか僕が食べられそうなんですけど」
「そっちでもえぇんやったら、それでもえぇけど?」

・・・・・・・
レベル7、精神感応系、サイコメトラーの犬丸とそのパートナー、やっぱり高校生の佐野清一郎。
一目見たときからにじみ出ていた、お人よしを絵に描いたようなキャラである犬丸が、ある意味人間として一番目を逸らしたい部分を強く感じさせられる能力なんて、と挨拶した直後に同情したのはほんの数時間で、まぁ結局あの変態オヤジ・・・小林と付き合いがあるだけの人間とすぐに思い知らされたときを森は思い出す。
いやぁ、なんていうの?
周囲なんかどうでもいいっていう感じ全開のバカップルじゃぁ、同情するのが失礼よね、ってことで。


「どーしたんじゃい、森。
浮かん顔しとるのぉ?」
「・・・・・・・・当たり前よ」

なんでここにいるのよ、わたし。
そう切り替えした相手は、本名不明。
自称「神」というかなりファンキーな格好のおっさんだった。
この第3部署の部署長を任命されている、例外的にパートナーを持たない、レベル7テレポーター。
てきとーなおっさんで、てきとーな人間ながら、その能力のコントロールは洒落にならない。
それは認める。
かつてはパートナーを持っていたらしいが、なにか過去にあったらしく、もう相方はいらない、と主張して、それを実行しているそうだ。
犬丸から聞いた話だが。
そして今日は今いないけど、バイト事務担当でありながら、実はこのBABELの陰の実力者、鈴子ちゃん。
それから。

「こばせん。今日のごはんなにがいい?」
「んー。お前がつくるもんだったらなんでもいいんだけどなー
そーだなぁ。さっぱりしたいから棒棒鳥とそうめんとかいいなぁ」
「おぅ♪」

レベル7、PK小林と、そのパートナー植木耕助。
最強にして最熱。
その皮肉すら彼らにはすでに日常と言うから胃が痛い。

「・・・・・・・なに?この変態の巣窟」
「そりゃお前さんもはいってるのか?」
「はったおすわよ、おっさん」


05


そんな日常の中、その「始まり」は唐突に訪れた。
森は咄嗟、受話器をとる。
微妙に、気分を変えたかったからもあったのだが、気分をかえるどころではない事態が、電話越しに指示された「指令」だった。

「はい、こちらへんた・・・ちがう。ヘルヘイムー
え?あ、はぁい・・・ほら皆、出動よ」
「お?」
「仕事か」
「そう。お仕事」

私たちが、ここにいるその理由よ。
森はそういったが、小林は眉をひそめて非常に腹正しいことを主張した。

「つまんねぇのならいかねぇぞ、俺ぁ」
「・・・・小林さんっ」
「あかんて、ワンコ。
このおっさんそういう性分やもん」
「そういう性分なんですー」

・・・・・・・・かわいくない。
だが、そんな態度も今だけだという確信が森にはあった。

「大丈夫よ、犬丸。
このふざけたオッサンが合点気合の入る仕事だから。
っていうか、ここのえらい面子もわかってるからねー
つまらない仕事なんて、そう回さないわよ」
「ふぅん?で?」

殆ど、ゲームのようなやりとり。
にやり。
森は自分が物騒に笑う表情を自覚させられる。

「パンドラが動いたわ。
発想の物騒さはウチとどっこいどっこいね。
あいつら、普通の人々の本拠地ぶち壊すつもりみたいよ」
「・・つまりほっとけばあのウザったい連中一掃するんじゃな?」
「それを止めるのが仕事」
「えぇやん。あんな理解も想像もない連中、片付けてくれれば楽やし」

犬丸を後ろから抱きかかえながら佐野が唇を突き出す。
いやなことがあったのだろうか?
可能性はある。
特にESPは理解をしても受け入れずらい能力だ。
そう。佐野が不快な表情をするのなら、それは犬丸に対する偏見が原因なのだろう。
いや、だからって納得するかって言ったら別問題。

「そーやって普通人と能力者の間にぼこっ、と溝をつくっちゃダメなんだってば!」
「なんで」
「真顔できくなーっ」

あったりまえでしょうが。

「生真面目じゃな、森は」
「そんなつもりはないんだってば。
あんたたち、今の現状があまりに当たり前だからおかしいと思ってないだけよ。
・・・・・距離があいてることが、当たり前だなんて思わないで」

ほんの最近、能力者として目覚めた森は、本当に悔しかったからそうと告げた。
誤解していた自分も(彼らの人間性はともかく、だ)、理解した自分もいるからだ。
だからこそ、森の言葉にその場にいたメンバーは全員、言葉をなくし、ほんの少し、目を逸らして沈黙する。

「・・・・・・・」
「いくか」

先に言ったのは植木。
小林が肩をすくめる。

「じじぃ」
「ほいよ」
「植木」
「なんだ?コバセン」
「テレポートではなれねぇように、手握っててくんねぇ?」
「いいぞ」
「あwワンコ、ワイも〜」
「そうですねw佐野君」


「あの。ごめん。シリアス不許可?」
「まぁ、このシリーズは、そうじゃなぁ」
「しくしくしくしく」



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