すちゃらかコラボ話3連荘
×ばけぎゃ
×ぬ〜べ〜
×もやしもん
こころもちコラボ
(ばけぎゃというよりはうしとら
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「植木。今日からオヤジさん取材旅行なんだろ?」
「うん。よく知ってるな、コバセン」
「うえきー、お前家に盗聴器あるかどうか調べたほうがいいぞー」
「だな」
「あとビデオとかな」
「壷とか天井とか」
「あとコバセンにもらったもんとかな」
「不自然におかれた食いかけのスナック菓子とか」
「それはテレビだろー」
「あれ買うくらいならゲームボーイ買ってやりゃぁいいのにな、あの殺人犯も」

「っていうかお前ら話がズレてるが、おれぁお義父さんからちゃんと聞いたんだからな」
「・・・・・・・・・・・・・あぁ、三者懇談・・・」
「っていうか、ナチュラルに義父か。見えないはずなのにそう聞こえるのは罠か、おい」
「っつーわけで、問題はない」
「いやいやいやいや」

「で?」
「遊びにいってもいいか?」
「え、めずらしいこと言ってる、このおっさん」
「っていうかその年で遊びに行っても〜とかって、なにげに寒っ」
「っせぇなぁ。なぁ?植木」
「いいぞ。でも」
「あ?」

「そういう場合、森が付いてくるってわかっててここで言ってるのか?コバセン」
「あ」
「・・・・・そうか。まぁ付いてくるわな」
「だよなぁ」

「・・・あの、もり、さん?」
「今夜、なににしようかしらねw植木、コバセン」
「・・・・・・・・・・うぉおおおおおお」


・・・・・・・・・・・・・・・・



仕事で遠野に来た。
正確には、取材で行きたいと言ったら、それが叶ってしまわったわけだが。
「・・こーすけはちゃんとごはん食べてるかなぁ」
正確にいうと、息子の耕助は食べているだろう。
というか、自分の為ではなく、別の男の為に作っているというあたりが、多少切ないわけで。
あぁでも森ちゃんがきてるかなぁ?男二人に女の子なのに、そのせいで息子のことが安心できるって、おとーさんどうしたらいいのやら。
「はぁ」
とはいえ、今のところ、息子の心配をしている暇はない。
何故ならさらっ、と・・・
「迷った」
木々が多くてついつい惹かれてしまって、ふらふらしてしまったところで結果こんなところで立ち往生。
・・・・・・・・・・えーと。
とりあえずポケットに入れておいた携帯を取り出すけれど、勿論圏外を示していた。うん、わかってたんだけど。
・・・・・・・・・さて。
「どうしたものかな」
言いながらも足を止めるわけにも行かずふらふらしている。
それにしても。
「全然怖くないなぁ」
静かな山は薄暗いのに穏やかで、心地よい。
本当に、そこにひろがる伝承の物語を思うなら、少しくらい怖くてもいいくらいなのに。
「とはいえ、帰らないとなぁ」
呟いたその視線の向こうで、ちらり、と人影が見えた気がした。
「え?」
驚いた声は自分でも思った以上に大きな声になった。
とたん、気のせいではなかったその証明のように、影が足を止めた。
場違いな人が、そこで不思議そうにこちらをみて首をかしげる。

・・・・・・・・・・

「・・・・・・」
足場がいいとはいえない。
どちらかというと、素直に「悪い」方だ。
だというのに、なんでまさかの紅いボディコンがこんなところで?
「え?」
「あら・・・こちらは散策コースじゃありませんよ?」
さらり、と長い髪を流して、小首をかしげると、彼女の印象を決定付ける少しきつめの目元がやわらかくなった。
思わずどきまきして、かーちゃんごめん、と謝る。
いや、決してときめいたわけじゃありませんから。
「いや、道を間違えて・・・」
「あら。ご案内しましょうか?」
「こんなきれーなおねーさんにご案内いただけるなんて光栄ですねぇ」
「あら。化かしにきたのかもしれませんよ」
「・・・・・・・」
そうか。
ここは遠野。
伝承と語りの邦。
「それもまた、楽し、ですよ」
「ではまいりましょうか」
彼女が、静かに微笑んで、そう切り替えした。

・・・・・・・・・・・・・・

彼女があまりに自然に歩くものだから、つい、その場所が足場の悪い森の中だというのをざっくりわすれたこの結果。
最初は庇っていられたものの、思いのほか早い彼女に追いつくのに必死になって、更に悪化。
思わず上げてしまった声に振り返った顔に、後悔の念を見て、自分が彼女に対して、大変失礼なことをしてしまったことに気がついた。
誰だって、自分がどの程度関わっているかは別としても原因で、誰かを傷つけることに、心が痛まないはずもない。
「大丈夫ですか?」
「たっはは、すいません、こんなとこおみせしちゃって」
「いえ。こちらこそ。
・・・・・・・・・人間が脆いということを、直に忘れてしまって」
「え?」
ぽつり。
呟かれた声には自責と自嘲。
投げられた言葉はまるで
(・・・・・・遠野、か)
芝居を打っているようには見えない女性の、その言葉にそう思ってもなんら慌てないのは、誰のおかげなのか。
「本当に、ただ少し休んだほうがいいかな・・・
そうしないと、おねーさんにご迷惑をかけてしまいそうだ」
「っ・・・、私の家が近くにあります。
よく効く治療薬があるので、おつれしますわ」
「え、でもこれ以上ご迷惑かけるわけには。
下山すれば宿にシップくらいあるでしょうし」
「いえ」
ひょい。
「へ?」
しなやかで、しっかりしてはいるけれど確かな女性の体。
仄かに鼻に、なにかゆずに近い柑橘系の匂いと、別のなにかが香った気がした。
とか言っている間に。
「あ、あのぉおおお?!」
「じっとされていてください」
いや。でもあの、えーと。
いい年で、その若い娘さん(おねーちゃんくらいかなぁ?)におんぶされるって、相当衝撃状況なんですけど。

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こんな山の中腹に、遠野特有の曲がり家か。
ますます物語りじみてきた岐路に立っているようで、動揺する。
それは日頃自分が口にしている言葉をそのまま、自分に導かれるかのような。
いや、ぽかんとしている間に家に入っちゃってますが。
「え、と」
「少々お待ちください」
「あ、はい」
和三土にそっとおろされて、そういわれれば待つしかない。
息も切らさず、彼女は奥へとその身を翻した。
ポケットから携帯を取り出してみた。
当たり前だが、圏外。
シップをもらったら、騙し騙し戻ることになるだろう。
とーちゃんなさけなくてなみだがでてくらぁ。
・・・・・・・用途が違うかな?
「人間?」
「え?」
動揺した声は自分が今入ってきた、その入り口から。
顔を上げると、端整な顔の青年があからさまな警戒でこちらを見ている。
・・・・・・・・・だんなさん?
「兄さん。おかえりなさい」
「・・・・・かがり?」
「怪我をされているのよ」
だからそんなに警戒しないで、と暗に兄、と呼んだ人に、奥からなにやら壷を持ってきた彼女が微笑む。
兄弟なのか。
そういえば目元のきつさは確かに兄弟かも。
こんな山の中で、兄弟二人で、かぁ。
(そのままストーリーになりそうだなぁ)
作家らしい好奇心がむくむくと競りあがってくるが、勿論家族の前のテンションに持っていくわけには行かない。
兄弟はニ・三言言葉を交わして、彼女は壷を持ってそっと居心地の悪い身の前に膝まずく。
・・・・・・・・・・・・ごめんなさい、かーちゃん。
かなりときめきました。
だってちょっとどらまなおみ足と、上から覗けた、その谷間というか。
・・・とか思っている間に塗られたなにやら塗り薬は一瞬の冷たさの後、やわらかく足を包んだ。
「え?」
自分でも酷くひねったというほどではなかったのだけれど、その分その後ムチャしたから、けっこう後を引くだろうな、とは思っていたのに。
「・・・・・・・・まるで、河童かカマイタチの薬ですね。
痛みがあっという間に引いた」
感心したままに声を上げると、美形の兄妹が、ふふ、と優しく笑って、自分が当てちゃったんだろうか、とちょっと困った。

・・・・・・・・

帰りは兄と呼ばれた人に背負ってもらってしまった。
まぁ女性よりはマシと思うべきだけど、やっぱり成人した身としては情けない。
足はもう大丈夫っぽいなぁとも思ったのだけれど、大事をとって、と押し切られてしまった。
それにしても動きがすごいけど・・・
「身軽ですねー。うちの息子も体が軽いほうですが」
「まぁ・・・この森も長いですから」
「・・・・・のこると、いいですね」

「えぇ」
どうして、こんなことを言ったのだろう。
ただ、彼らがこの森を愛していることだけは確かに分かったのでそう呟くと、そうですね、と静かな声が耳を突いた。


「あら、雷信さん」
「これは。沙夜どの」
結局背負われたまま宿の先。
不思議そうな声は、自分を最初この宿で案内してくれた柔らかな雰囲気の仲居さん。
色が白くて、髪の色も淡いが、はかなげという雰囲気は彼女にはない。
「植木さん。どうされました?」
「足をひねってしまったそうだ。
かがりの薬をつけたから、大丈夫だと思うが・・・」
「ありがとうございます。
かがりさんの薬なら、今日温泉でゆっくりされれば明日には大丈夫ですね」
そんなに効能がいいのかと思うと感心してしまったけれど、同時に本当に自分がつけてもらったものが、特別なもののような、そんな気がした。

・・・・・・・・・・

「・・・・・とーちゃん、動物園いった?」
「え?いや、いってないけど」
「・・・・・・・・そう?」
「あぁ」

「・・・・・・なら、いっか」
「こーすけ?」
「ん、よくわかんない。でもそんな気がした」
「そうか?あぁ、そうかもなぁ」
「え?」
「もしかしたらとーちゃん、意外と小説なんかよりすごい経験してきたかもしれないんだよ」
「えー、いーな、それ」
「でもこーすけにはまけるよー」




・・・・・・・・・・・・・・・・
 ほのぼの。だと信じる。一応(説得力の皆無さなんて今更さ




とある病院で、小林先生がとあるセンセにお会いします
(with地獄先生ぬ〜べ〜

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教師としてではない仕事の一端、とある町で怪我をした。
この程度放っておけば治るというのに、恋人とおかーさんはその主張を一切許さなかった。
保険証は持っているわよね、といわれて思わずうなずいたが最後、ひっぱられて、気がついたら病院の前。
・・・状況説明、終了。

「植木。本当に平気だからお前が怪我したみたいな顔するなよ、襲いたくなるだろ」
「病院でいう台詞じゃないわよ、この犯罪者。
怪我人らしく大人しくしてなさい」
そのけが人扱いを全くしていない年下のおかーさんは、財布から勝手に保険証・・・正しくは組合証をかっぱらい、本当に受付をしてしまった。
総合病院なので、自分で外科まで向かわなくてはならないが、大した距離ではない。
だが、周囲がそうと見なかったらしい。
気がついたら待ち時間0で優先的に見てくれるという。
森に言わせるともうちょっとで担架を持ち込まれるところだったらしい。
・・・・・・・・そんなに酷いか?と怪我をした腕を振ったら、血が散った。
・・・・綺麗に磨かれてワックスが数ミリの厚さを誇っていそうなリノリウムの床に、応急処置に捲いた包帯から滴ったらしい、鮮血が散る。
掃除の人にさすがに謝ったほうがよさそうだ。
通りすがりの患者たちからも、何度か悲鳴が上がった。
「こら」
「あー、流石にわりぃな、これは」
自覚がないだけに怒られても真剣味が薄い。
だがフリーの腕をがっちり掴んでいる植木が泣きそうなので、余計なことは言わないことにしよう。
外科の受付に付いた途端、待ち構えていたと思しき看護婦にひっ捕まえられた。
怪我した腕を。
「いでぇええ」
「当たり前です!」
いやいやいや。あんたのせいだって。
そういえれば少しは楽だっただろうが、勿論そんな余裕はない。
あっという間に診察室に引っ張り込まれた。
当然、森も植木もついてくる。
植木はともかく、お前本当に保護者気取りか、森。
「わたしにだって心配させなさいっ」
ツンデレキャラみたいな台詞を、だが照れた表情ではなくあからさまな怒りで言われても嬉しくはあまりない。
っつーか、植木に言われたらこれはこれでかわいいかもしれんが、お前じゃなぁ。
「殴るわよ?」
「けが人だぞ」
「知るか」
怒りに任せた彼女とあまり自覚のないけが人の漫才は、しかしふと鼻に付いた獣の匂いに中断された。
植木が相変わらずあいた腕をひっ捕まえたまま、毛を逆立てている。あからさまな警戒。
戸惑う暇もなく、さっきまでいかり肩で俺を引っ張ってきた看護士がいやに甘ったるい声で玉藻先生、と声を上げる。

医者か?あれは。
大変失礼だとはわかっているが、とてもそうは見えない白衣の優男が金の髪をかすかに躍らせながらこちらに近づいてきた。

「外科医の玉藻です。
えっと、小林さんでしたよね。傷を見ても?」

勿論見てもらわないとどうにもならないだろう。
威嚇が殆ど無意識になっているうえきの頭をぽんと叩いて我に返らせ、あいた腕で包帯をとる。
ぱたぽたと血が落ちたが、小さな悲鳴を上げたのは看護士だけだ。
「これは随分酷いんですが・・・痛くないんですが?」
「この程度なら慣れてますからね。
こいつらが大騒ぎしただけで」
玉藻と名乗った「医者」は、そう示された子どもらを見て、いくらか考えたようだった。
本来なら患者以外、保護者でもなさそうなこいつらは席を外すべきだろう。
だがそれを全く聞く気がないことも、分かったようだ。
なにもいわず、結局再び傷口を観る。
「本来なら縫ったほうがいいんでしょうけど・・・
貴方ならへいきそうですね」
「・・・・・・・・・」
そういいながら、脱脂綿を取る。
・・・・・消毒の方が痛いんだよな、こういうのって。
ぼんやり思ったが、ギャラリーがいるので勿論、平気な顔をするしかない。

・・・・・狐に怪我を見られるなんてのは酒の肴だなとか、ちょっとばかりぼんやりと思ったのは、多少現実逃避というか、気休めというか。


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人ではないものが丁寧に巻き上げた真新しい包帯を見下げ、とりあえずこれからはもうちょっと気をつけよう、と形だけとはわかっていても心に決めた。
なにより植木の心配そうな顔と、森の切れっぷりが罪悪感やら恐怖感やらで。
「飯食って帰ろうぜ。てきとーなとこでいいや」
うん、と森が頷いたが、植木が不機嫌そうな顔をした。
「どうしたのよ、植木」
「コバセンにはおいしいご飯を俺が、つくってやりたいのにー」
「あんただって疲れてるでしょ?
なれない相手とガチったんだから」
「でも平気だって」
「怪我ないの?」
「ないっ」
あってもないといーそうだな、こいつ。
ほんのちょっとだけ思ったが、口にしたらまたややこしいことになりそうだが。
「・・・・・・植木」
「ほへ?」
「飯いくぞ。んで、さっさと帰っていちゃいちゃしよう」
「怪我してるけど?」
「着くまでにゃぁ治ってるって」
「ほんとに?」
「お前が試せよ」
「はいはいはいはいはいおしまいおしまい。駅いくわよ」
「おーよ」
「りょーかい」
森が大きくため息をつく。
いい加減慣れればいいのに、こいつも。
「・・・・っさい。それより急ぎましょ?お腹すいちゃったわ」
「そーさなぁ・・・ん?」
「今度はなによ?」
「いや。なんつーか」
「なんつーか?」

「地獄で、時々嗅いだにおいだ」

冗談ではなく。
唇に走った言葉の色に森と植木、二人が警戒した目を走らせる。
臨戦態勢。
病院ではなっていい気配ではないな、人事ながら。
「ぎゃぁあぁっうわぁああんっ」
「げ」
唐突に号泣が響いた。
やりすぎたか。どうやら表現は出来ないが気配の感じ方は敏感な赤ん坊が反応したらしい。
「・・・・・・まずっ」
「逃げる?」
森が提案してきた言葉に、正直頷きそうになる。
「まぁ俺たちが原因だたぁわからないだろーけどな。
もしかしたらアレの気配を悟ったのかもしれないし」
「地獄っていったから、つい反応しちゃったけど」
「あぁ。地獄の・・・ありゃぁ、俺らと一緒にとっ捕まっていた連中だな。
罪を犯しすぎて堕ちた連中・・・鬼、だ」
「なんだってそんなのが平穏な病院に来てるのよ」
「さて?狐が働いている病院だからなぁ」
案外神霊科みたいなのでもあるんじゃねぇの?
あるか、んなもん。
「おー、よしよしよし」
そんな中、その子どもを宥めようという声が上がった。
抱えていた、母親のものとはちがう。
罪悪感に目を投げると、病院にはあまり似合わない、黒のパンツに白のシャツ、黒のネクタイに黒い手袋って相当嫌がられそうな格好の男が赤ん坊をあやしている。
「あらら、すいません」
「いえ。俺が驚かせてしまったかもしれないんでー」
「はぁ?」
妙なことを言う男に、母親も不思議そうに首をかしげている。
・・・・・・・あー・・・
「おに?」
「には見えないわね。なんかいかにもせんせーっっていう、びみょーな世間知らずって感じ」
「森、お前教師に対して随分偏見があるな」
「あら。先生らしくない誰かさんに、そういわれてもねー」
褒めてるのよ、多分。
「帰るか。汚名はあのにーちゃんが被ってくれるそうだ」
「そうきたかー。まぁいいけど」
妙な病院だったな、と呟くと、妙な患者が行きやすいじゃない、とさらり、と切り返されるが。

・・・・・・・・ちょっと待て。



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もやしもん編

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「・・・っと、ゆーわけで、出張な」
「どこに?」
「農大」
「はい?」

「"菌が見える"?」
「また特異体質というか性質というか。
んなゆかいな能力持ち君になんの用よ」
「まぁつまるところ、"特殊能力者"ってのが天界に関わるかそうでないか。もしくは使えるか使えないか、っていう」
「つまり、人材バンクの査定?」
「ぶっちゃけた結論だな」
「最適な表現と自負するわ」

「農大ってはじめてだ。
ねーちゃんの看護大ならいったことあるけど」
「なんだその男の理想郷イメージな独立国家は」
「?」
「で、コバセン。本人が何所にいるか知ってるの?
広いと思うんだけど、大学って」
「あぁ。特にここは構内に農園だの牛だの豚だの発電所だの」
「・・・自給自足できるじゃない」
「大学祭なんかではしてるらしいな、実際。
さて、樹ゼミ。ここだな」
「・・・教授かなんかなの?」
「んにゃ。今年はいった一年、らしい」

「・・・・・・・バラエティ・・・」
「っていうのか?コレも」
「どちら様でしょうか?」
「樹教授にはアポをとっているのですが。
小林と申しますが・・・」
「申しわけありませんが、今樹は席を外していまして・・・」
「じゃぁ菌の見える人は?」
「・・・」
「そっちに用なんだから、いーよな?コバセン」
「お前な。らしいっちゃぁらしいが、あんまり本人がオープンにしているかどうかわからないことをサラっというな、失礼だろ」
「そうなのか?」
「そうなの。コバセン、その当人の名前は?」
「えーと。沢木・・・そうえもんただやす」
「おっけ。というわけだけど、どれ」
「どれ・・・って」
「名前的にさすがに男よね。
髭と丸とチビとゴス。はい、素直に名乗る」
「・・・なにワイら女子高生と思しき女にひどいこといわれとんのや?」
「っつーか結城をサラッと含めたぞ。只者じゃネェ」
「悪いよーにはしないし、社内秘?だ、一応。
時々来るアルバイトとでも思ってもらえればいい。つかえるか使わないかはこれから決めるんだがな」
「信用できませんけど」
「例の話以上に怪しい組織からだから否定はしないが、本人次第だな。こればっかりは」
「あー、じゃぁ話聞くくらいなら」
「沢木?!」
「だってアノ人たち、悪い人じゃなさそーじゃん。高校生いるけど。色々ぶっ飛んでそーだけど」
「あんたのその性格も十分変よ、沢木」
「っかし及川がいなくていいタイミングだったな」
「それにしてもどこからバレたんや?やっぱ樹センセか?」
「まぁアノ人隠せっていうわりに、先輩方にもばらしてますし」
「それもそうだな」
「こまったセンセや」

「・・・なんだ、味方多いみてぇじゃねぇか」
「え?」
「よかったな」
「・・ぁ・・・まぁ。はい」

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いつものようにいつもの研究室でグダグダしていたら、なんか妙な人たちが、明らかに俺を探しに来た。
菌が見える人、と高校生の男のこが(まぁ数ヶ月前まで俺もそっちの位置だったんだけど)いった途端、いきなり背中に重みを感じた。蛍だ。
警戒しているようだけれど、そんなことはないだろう。
なんだか妙に不機嫌な女のコに、チビといわれてもあっけにとられて怒ることもできないまま、とにもかくにも話を聞くというと、じゃぁここでもなんだから、とリーダー格らしい銀髪のおっさんに引っ張られた。
正直物騒な雰囲気だけど、悪い人じゃないんじゃないかな?
でなきゃあんな言葉は出てこないと思った。


「とまぁ、説明をするとな。
俺の所属している組織でお前さんの手が借りたくなる事態があった場合、手を貸してもらえないか、と簡略するとそういうことだ」
「はぁ。でも俺が使えるかどうかはわかんないんじゃないっスか?」
「使えないのか?」
「植木、直球すぎ。
それからコバセン、あんたも簡略しすぎだと思うんだけど」
「んなこと言っても、俺たちの組織って普通の人間から見たら怪しいぞ?名称とか」
真顔で自分の所属している組織にそんなことをいうのも妙だと思うけれど、それに巻き込まれてる俺はどうなのか。
「・・・・そうなのか?全うなのに」
「まぁ、名称だけ考えれば、この上なく不審よね・・・
でもそれじゃぁ変な話、犯罪とかに持ってかれるんじゃないか、って思われない?」
「え?そうなんスか?」
さすがにそんなのには関わりたくないぞ。
「それはないぞ」
「・・・・・・・」
・・・・・・なんだろ。このひとたち。
悪い人じゃない。
多分、俺の力を信じていないわけでもなくて、なんていうか、うん。この3人で会話するのが日常、っていうか。
・・・・・・・なんで俺ここにいんの?
「でも俺の力使うって・・・」
『ただやすー』
『かもすぞー』
とかって言ってるだけのやかましいこいつらが、どう使えるって?
「案外説得とかできるんじゃない?
人間滅ぼせちゃうような連中とかも」
「いやいやいやいや。できませんて。てか言うこと聞いたことねぇし」
『そんなことねーぞただやすー』
『あそんでやってるじゃねーかー』
「やかましい、お前ら」
「なんだ。しゃべれるのか」
「え、あ、はいッス」
「すごいな!それっ」
「煩いだけだって」
すごいなんて思ったことはない。
だが紅一点の女の子は、にやり、とわざとらしく笑って見せた。
「そう?すごいわよ。テスト原稿を盗み見させたり、スパイさせたり」
「無理だし、そんな風に使うつもりもねぇし」
・・・・・・・・っていうか、そんなの考え付きもしなかった。
いや、考えまい。絶対無理だ。
「冗談よ。ごめんなさい。
友達のことそんな風に使っちゃダメね」
「友達って・・・・」
なんかさみしい生き物みたいなんですけど。
菌がともだちって。
「まぁ、本当はおまえさんらみたいな"異端"の人間を保護するっていう話もあったんだが・・・
お前さんの場合は、全く問題なさそうだしな」
「え?」
なんかここまでくると拍子抜けするよな。
そう小林と名乗った男の人はいったが、それはここに来てからだ・・・と言っても仕方がないか。
「随分仲間がいるじゃネェか。おせっかいだったな」
「・・・・・・・」
穏やかに。
そういわれてどきどきした。
確かに、いままで、蛍しかいなかった俺からすれば、今自分は酷く広い世界に突っ立って、素直に生かされていると今なら感じられるけど。
そんな風に思った途端、まるで俺から興味を失ったように、小林氏が伸びをした。
「さ。目的も果たしたし、帰るか」
「おー」
え?
「はぁい。もうちょっとみたかったけどなぁ。農大って」
「また来るさ。収穫祭あたりお邪魔してみようぜ。
ちょっとした仕事よりハードだが」
「あー・・・そうッスね。それでもよければ、どうぞ」
正論だ。
「コバセン?」
「いってみようぜ。野菜がタダだ」
「くるっ!」
・・・・・・え?少年そういう反応の人なんだ・・・ちょっと意外だな。
あの光景に対抗できるかどうかは、別として。
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