「結果として、マルならそれでいいわけよ、結局」 決意の群像 恋愛という言葉が似合わない連中。 森 あいにとって最も身近にある恋人達はそう評価するのに値する。 「いや、幸せならいいんだけどさ」 「どうした?森」 「なんでもない」 まさかあんた達のことでちょっと悩んでる、なんて切り替えせず、苦く笑って言葉を濁しながら、行儀悪いとわかっていても、弁当箱に鎮座する、目の前の少年の髪と同じ色の野菜を串刺しにした。 「例えばさ」 「?」 「植木、あんたコバセンに愛してるとか言われたことある?」 基本、男女で昼食ともなれば皆冷やかすのが中学生という生き物だが、この場にいた人間の例外なく誰もがこの二人がそう言う関係とは思っていなかった。 色気が無いことなど、既に百も二百も承知だからだ。 昼食をとりながら、校内一(一部に言わせるところの三界一)のお節介・森と校内一マイペースの植木ではだから安心して雑談に興じていた。 それも結構、とんでもない類の。 「ベットの中でならいわれた・・・・気がする」 「っへー」 なんかすっごい告白されているが、森は単純にふんふんと頷くだけだ。 けれど本人は実は、すっごく喜んでいる。 あのとーへんぼくでもちゃんとそういうことはいえているのかと。 とりあえず誰か一人でも聞いていればちょっと待てとツッコミの一つでも入りそうなものだが。 「あんま覚えてない?」 「よゆー無い」 「バトルのときより?」 「あぁ」 殆ど女子学生同士の会話見たいな内容だが、その狭間狭間では妙なネタが混じる。 事情を知らないクラスメイトでは、途中からどころか、最初から聞いていたって一体どういう経緯でこういう会話になったのかと首を捻りたくなりそうだ。 だが森にはわかるし、真剣だ。この上なく。 「じゃぁ質問変えるけど。 なんかもらったことある?コバセンに」 「貰ったって言うと・・・・・・正義って気持ちとか、能力とか?」 「形に成るもの」 「形・・・・・・・・・?」 「そう。食べ物おごりも却下ね」 興味津々、というよりも、彼女の聞き方は殆ど誘導尋問の匂いがするものだったと、傍目には感じるだろう。 だが身体的な意味で身に危険が無い限り、基本的に鈍い植木には疑問に思う興味も無い。 「んー?なんかこの前くれるってのは言ってたな」 「くれる?」 「そう。なんだっけ?3か月分がどうとか」 「ををっ」 ここで初めて森は身を乗り出した。 珍しいただならぬ様子に、流石に周囲がその目線を向けるが、本人が気付いている様子は、あまり無い。 「なんか元神さんに教えてもらったとか言ってた」 「やっぱり案外俗ね〜あのアロハ親父。 けどまぁ今回は褒めてあげましょ」 「??どゆ意味だ?森」 流石に変だと気がついたらしい植木の問いに、しかし森はないしょと笑っただけだった。 そこまで覚悟があるなら、自分も覚悟を決める。 そんな三段どころか一段論法が展開されているなんて、勿論植木には察せられない。 「森はコバセンがなにくれるのかわかるのか?」 「給料3ヶ月でわから無い人間いたらそれはそれで尊敬するわよ?私」 「は?」 森の言葉に植木は首を傾げるばかりだ。 だって実際、わからない。 「いや、正直。あんたが気がついていないの既に尊敬の域。 あ、聞いてないだけか」 「なんで?」 「わかんないならいいわよ。いやでもわかる時がくるから」 「???」 植木の混乱に、森は忍び笑いを堪えながら、でも説明は一つもしなかった。 その代わり、使命感には燃えていた。 「日程決まったら教えてってコバセンに言っといて。場所抑えるからv」 「なんの?」 「だから。わかるわよ、ちゃんと。そのうち」 「はぁ?」 結局お茶は濁されて、植木はこの日のやり取りを後々小林に相談することに成る。 その時の小林の顔は植木がそれまでみたことの無いめずらしくも「照れた」という表情で、けれどその後、森に文句を言おうとわざわざ小林に備えて電源を切った彼女の携帯に、神様経由で無理矢理回線を開けと忙しい神様を脅迫するのだが・・・それはまた、別の話。 |
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