PRE STORY:01 「アーカム?」 「その様子だと、どーやらしらんらしいな」 露骨な疑問系で首をかしげた「後輩」の様子に、百舌鳥はむしろあきらめの篭った溜め息をこぼした。 世界最大ともいわれる財団の名すらぴんと来ない国際エージェント。 いや、それより形だけでも先進国といわれる日本の住人だろうか?この高校生は。 かつての自分の今は亡き相棒なら、この息子をどう弁護するだろうか?・・・いや、しないだろうなぁ。 「そのアーカムが今回の依頼人てことですよね?」 「あぁ。そうだな。正確にはアーカムの1セクションだが。 お前はそれだけわかっていれば十分か」 「まぁ明日の生活のために依頼をこなすだけっすから」 はっはーと呑気に笑う若者に緊張感は全く見られない。 尤も、ASE日本史所の一室では、この人間の緊張する要素は見当たらなさ過ぎるか。 「まぁいい。明日向こうのエージェントが詳しい話を持って迎えに来る手はずになっている。楽しんで来い」 「・・・・・・・・?はぁ?」 楽しんで、といわれても、それを鵜呑みにするほど若者・斑鳩も百舌鳥との付き合いは浅くない。 ただ、なんとなく。 何かがいつもと違うような。 予感は自分が自覚なくも長くはないドライバーとしての経験を刺激したような。 そんな気がした。 そんな自信のない斑鳩の予感を裏付けるようなやり取りは、当人が退室した後の電話越しに交わされていた。 「ま、役にたたんこたねぇひよこだ。せいぜいこき使ってやってくれ」 「貴方がそんなに褒めるなんてよほど見込んでるのね。楽しみだわ。 私も同行しちゃおうかしら?」 「おいおい。仮にもアーカムのトップが何いってやがる、魔女」 「おあいにく様。私は現役よ、貴方と違って。百舌鳥」 「耳が痛いな」 「そう?私の目には浮かぶわ。スーツ姿でドゥカ転がしながら片手で機関銃操って不適に笑う貴方が、ね」 「よせやい。んなことしたくねーからひよっこのケツに火ぃつけて修羅場に蹴り落としてやってんのに」 「ふふ。報告書が楽しみだわ」 「・・・・・・・・・・」 翌日、放課後。 そういえばいつもの惰性で学校に来てしまったが、クライアントエージェントがいつ来るか、聞いていなかった。 そう思いながら岐路に着いていた斑鳩はふと校門の当たりにその人物を見て校庭の中央で足をとめた。 「えーっと」 校門を塞ぐようにして一台のジープが止められ、それに寄り添うように大学生程の青年が所在無さげに自分に向けられる好奇の目線に居心地わるそうにしている。 オウルたちの格好とよく似た「実務用」と観られるその服装がよく似合うがっしりとした体躯でそれがなんとなく、斑鳩に確信を抱かせた。 微か遠巻き歩くことで帰宅生徒たちが作った「狭間」の中を突っ切り、斑鳩は青年に声をかけた。 「えーと。アーカムの人ですか?」 「あ?」 いきなりかけられた声に驚いたのかそれともこんなガキが度胸あるなとでも思ったのか、青年が微か目を丸くして斑鳩を見た。 しかし一瞥することですぐに納得したのかあぁそうだ、と彼はためらいなくうなづいた。 「斑鳩 悟?」 「です」 「悪いな。学校まで押しかけて」 「いえ。教室まで来ていきなり引きずられることとか多いんで、待っててもらってるだけマシかなーって」 事実当たり前のことを言ったのだが、青年は言われた意味がよくわからなかったのか再び驚きに目を丸くさせた。 ははは、と力なく笑う斑鳩に、不安を抱かないほうが可笑しい。 青年も例外ではなく大丈夫か?こいつ、という目が斑鳩に突き刺さるがいつものことだ。 気にもせず、斑鳩はすいません、とだけ先に謝った。 「・・・・・・まぁ仕事さえしてくれればいいけどな。いくぞ、斑鳩 悟」 「あ、はい。えと」 あぁ、と言葉を詰まらせる彼に名乗っていないことを思い出した青年は、思ったよりも気さくな笑顔で自らを名乗った。 「御神苗だ、御神苗 優。大学生兼、アーカム所属のスプリガンだ」 「あ、はい。斑鳩です。よろしくお願いします」 ・・・・・・・・・・すぷりがんてなんですか?とは聞けないぐらい当たり前に名乗られて。 とりあえずジープに乗り込んだ斑鳩は、呆気に捉えている学校の面子には結局気がつかなかった。 いやぁ魔女と百舌鳥さんが知り合いだったら面白そーだなぁーって
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