明るい(と嬉しい)家族計画 「森、今日お前チビ預かれ」 「断る」 担任からの不意・・・それも授業中の一言に、クラスの影番…もとい有名人・森あいは即答した。 あまりといえばあまりの、あっさりきっぱりな男前っぷりに、なんかクラスのあちらこちらからぱちぱちと拍手が響く・・・って、なんで? 「嫁の実家に預けてくればいいじゃない。 っていうか魂胆三重見栄だから引き受けたくないのが本音」 肩をすくめて言いたいことを言い切った彼女は、これ以上聞くことはないでしょ?さっさと授業すすめなさいよ、と無言で担任に催促する。 そう。授業中なのだ。 一体なんだって、人より親しい程度の担任の子供なんぞを泊まりこみで生徒が預かられなんていう展開になるわけだ? 「なに?もしかして夫婦生活ご無沙汰なん?コバセン」 生徒の一人が、兵にもそんな声を上げる。 クラスの担任で、社会教師。 その小林が新婚?なのは勿論、周知だ。クラスメイトはみんな(一応)祝福している。 しかも、できちゃった婚。 ともなれば奥さんが子育てにおわれて・・・とはまぁなるほど、藁(=森)にもすがって「夫婦の時間」がほしいといってもわからないでもないかもしれない。 「同情するなら時間くれ」 「わぉ、切実」 「っていう旦那の主張だけど、嫁の方はどうなわけ?正味の話」 「へ?あ、なに?」 ごめん。聞いてなかった。 机の隅にある技術の時間に、ほかの男子生徒から手作りでプレゼントされたベットの上でぐーすか寝ている息子を、厭きもせずに眺めていた小林の嫁が、はたと顔を上げる。 周囲の空気をぜんぜん読めていないのが丸わかりだが、それが正直、この奥さんらしいというべきか。 いや、詰襟学ラン三白眼だけれども。 「いや。だから植木。今どんな感じだ?」 「なにが?」 「ぶっちゃけると夜の生活」 コバセンが森に預けるなんて暴挙に出るくらい、さみしいわけ? ちょっと、暴挙たぁなによ、ぼーきょとは。 クラスメイトの発言に引っかかって文句を言う森自身はスルーして、下世話とわかっていても、中学生の興味にエロいことがひっからないわけがない。 いや、男同士なんだけどね? 「夜?正義に付き合ってねちゃうこと、おーいかな・・・」 それでも。手のひらサイズとはいえ、天からの贈り物は生まれるんだから世界には不思議なことだらけだね、関口君。て。誰だ関口て。んな名前はこのクラスにはいないぞ? とあるクラスメイトがつけたところの「三寸法師(10センチ弱だから)」なんてファンタジーも、まぁコバセンと植木だし?なんて無茶な理屈でこのクラスでは立派な日常。 クラス総出?で「この家族の秘密を護る」なんて一致団結済。 だからって、旦那の我侭にまで付き合う気はあんまりないのだけど。 「結局コバセンが自家発電すれば?」 「あらやだお下品」 「っつーか同情しろよ、そのシュチュを! そろそろ二人目とか言う空気を作る状況を用意させろ!俺に!!」 さっきは同情するならとかなんとか言ってたくせに。 だいたいそれ自体、大人の言い分ではどうにもない気がするし。 「えー。だって俺らまだチェリーだし」 「うむ。やりたいざかりに出来る人間が訴えてもな」 「いやみ以外の何者でもねーって、コバセン」 「ちょっと、男子。変なこと言わないでよ」 女子からそんな文句が上がるが、当たり前だ。 「っつーか、お前らなぁ・・・」 「ってか、正義いなけりゃどうにかなんお?」 「おぅ。それは勿論」 正義。文字通り、神様からの贈り物。件の夫妻(夫夫?)の一人息子。 ただし、先述したとおり、都合により現在手のひらサイズ。 「まぁテクはありそうだよな」 「若いころは遊んでそうだし」 「っていうか絶対節操なしだったって」 「お前ら。植木の前で勝手に人の青春時代を組み立てるな」 「心当たりがないとは言わせん」 びしぃ、っと担任相手とは思えない一言。 う、と小林も、本当に止まってしまうわけだが、案外嫁の方はこの話には平然としているご様子。 「なんで?」 「なにが」 「コバセンのレンアイヘンレキ、気にならないの?」 「昔のがより戻そうとしてきたら、コバセンは俺のって思い知らせてやるだけだから」 女子からの問いに、嫁の対応はにっこりあっさり。ついでにばっさり。 あぁ、こりゃあれだ。 「愛されてるぞ、コバセン」 「これで物足りないとか言ってるのははっきり言って犯罪だ、おっさん」 「いいじゃん。清く正しく。夫婦としては間違ってねぇぞ」 「お前ら・・・」 このクラスに俺の味方はいないのか、と嘆いたところで、帰ってきた答えと言えば。 「「「「「植木がいるじゃん」」」」」」 ・・・・・・・・・ごもっともで。 絵に描いたようなラブコメ、というやつに挑戦した・・・
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