いっそのこと、腐れ縁とかそういうこと。





 FATAL CONNECTION





「たんじょうびおめでとーございます、海堂先輩」

「うっわー、越前、心がこもってねぇな、こもってねぇよ」

面倒そうな口調と一緒に手渡されたものを見て、海堂は礼を言うよりも先に、苦い笑いを口元に乗せた。

成程、勝手に人の家に電話を掛け、「明日弁当作らなくっていいっすから」と他人の母親に言い切っただけのことはある。流石曲者と王子さまのカップルだ。

青学テニス部部室。

放課後ならばいやがおうに賑わうこの場所は、今は新3強と呼ばれている部長・副部長をそれぞれ任する桃城と海堂、そして2年生にして文句なしのエース、越前しかいない。

それも決してミーティングだとかそういう真っ直ぐな理由ではない。なぜなら書類が散乱すべき机の上には独特の形をした鍋がおかれ、その中ではクリーム色のいい香りがとろりと漂っている。周囲にはパンとかハムとかベーコンとかジャガイモなどの王道に加え、ソーセージやポテトチップスなんてものまで、一口大にそろえられていた。

海堂が受け取ったのは、それらを突き刺す為の細身のフォークだ。

所謂、チーズフォンデュである。先ず間違いなく、中学のクラブ部室でやろうという代物ではないはずだが・・・・・

「だって俺達から何か残るもの貰っても嬉しくねぇだろ?お前」

「そうだな」

「うわ、海堂先輩即答してるし。
まぁそうっすよね、欲しいのは乾先輩がちゃんとリサーチして渡してるっすよね」

うんうんと越前が勝手に納得している。

もう今更取り繕うのも馬鹿馬鹿しいから、海堂はそれを聞き流した。

夕方、約束をしている人だ。

夜は家族が祝ってくれるだろうから、と、去年も彼は、気を使ってくれた。

その気の使い方にすら感動している様では、すっかりとほだされているということだろうか。

その記憶が表情に出たというのか。

ふと顔を上げると腐れ縁になりつつある2人が意味ありげにニヤニヤと笑っている。

「海堂、お前今日部活欠席な、部長命令」

「な、おい!桃城!」

「その峰はもう乾先輩には伝えといたんでその分の練習量は自主連の時に増やしておいてといっといたから問題ないっすよ」

「越前!」

こんなお節介な連中だったかと記憶を辿るのだが、どうにも妙なテンションだなと目には映るだけで、海堂は諦めるしかない。

まぁこいつも、多分友情と言うやつなのだろう。

来年は、自分たちも経験する距離だ。

中学と高校。物理的には大したことが無いのに、精神的には驚くほどかけ離れた一つの年の差を酷くいらただせる溝。

「・・・・・・・・・それも、プレゼントってことだ」

不敵に曲者の笑みを浮かべた桃城に釣られる。

和やかとはいえないがどこか愉しさがこみ上げてきて。


海堂は、自然、もうすぐ恋人に奪われる唇に心からの礼を載せていた。



かおっちゃんはぴぃばーすでぃ。
一年後バージョンです。
で、また喰ってます。
いい加減このパターンはどうにかならんのか・・・・
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