桃sBD
BATTLE OR GAME
「どこに入れておいたんだ?」
程よく冷えているネタたちに、今日の主役は一言だけ呟いた。
午前中だけの練習を終えた夏休み初日、テニス部室は実に奇怪な姿を3トップたちの前に晒していた。
部長、桃城 武・副部長、海堂 薫・エース、越前 リョーマ。
しかし彼らの日頃行なうミーティングの場所である机には、木製の盥に輝かんばかりの銀シャリ、大皿には海の幸がごそごそと。
それから長方形の海苔の束。
意味することは唯一つ。
本日のメニュー・手巻きずし。
「家庭科室の冷蔵庫だ。
納得したならさっさと座れ」
「・・・・・・おぅ」
下手したら劇薬の隣りにあったかもしれないコハダの艶やかな姿を見ながら、一応促されるままに座す。
「結構高くついてね?」
「そうでもないすよ、桃先輩。
一応分の皆から、300円づつのカンパでてますから」
「それに河村先輩の伝手で安く仕入れてな」
毎年、部長の誕生日にだけ全員の部員からそうやって「ねぎらい」のプレゼントをする。
それは余り古いしきたりではなく、前部長が言うには、彼の2つ前の部長がさり気無く決め付けたことであるらしい。
閑話休題。
因みにそのカンパは、毎回ならテニス関連のことで使われるのが日常である筈なのだが。
「寿司かい」
まさかその部員たちも「新部長の誕生日」用カンパ、がこんな代物に化けていたとは思っておるまい。
と。いうか。
「お前等相伴に預かるつもりだったんだろ」
他に思い当たりもしやしない。
「だってお前こっちのほうがいいだろう?」
「それに桃先輩だって一人ですし食べても嬉しくないでしょ?」
決め付ける、多分これからも長いこと付き合いがあるだろう2人にいっそ逆らえればいいのに。
その確信に満ちた笑みが、とても
心地いい、最高のプレゼントであるかのように。
反論させない強さがそこにはあって。
「えぇいくそ。ちゃんと俺に優先権があるんだろうな」
「なにいっているんだ」
「そうそう」
一度開き直って見せたのに、重なる言葉は挑戦的で同じだけ子どもじみて。
「「闘わざるもの喰うべからず、だ」」
「こーさん」
そこにあるのは確かに友情。
確かに、好きなものをごそっと勝手に食えるより、何かと騒ぎながら勝ち取った方が、上手いのは経験上、よく知っている。
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