「暢気な鍋だな」 「ま、たまにはいいっしょ」 ■マイペース■ 教員達の研究会だとか何とかで、午後は一切の部活動を禁じられたからといって、素直に帰る人間は案外少ない。 丁度誕生日だし、という理由で昼ごはんを皆で食べようという話になったテニス部メンバーもどこに行くともめんどくさいという理由で材料持込だった。 勿論どっちの方が面倒なんだと突っ込んではいけない。 土鍋の中に真っ白な液体が沸騰しない程度の熱をもって存在している。 表面には柔らかな膜が張り、ゆっくりと皺を寄せ始めていた。 「一番ゆばは主役にどうぞ」 「あぁ」 主役である手塚は、そう促されて鍋に箸を差し込んだ。 まったりとした重さが指の先で伝わり、持ち上げたクリーム色の膜が食欲をそそる。 ほんの少しだけ塩をつけて口に入れると、とろりとした香りと味わいが口の中に広がる。 が、次の湯葉ができるまでは2・3分後と言うとことん気の長い代物だ。 高校に入ってからあまり機会のなかった下らない雑談を交わしながら、それでも徐々に話題はテニスや、後輩の話題に変わっていく。 その合間に順番に出来た湯葉で舌鼓を打って、一回りした所で豆乳鍋として用意しておいた肉や野菜をどんどんぶち込む。 今度こそ鍋としての機能が果たされる間も、一度火のついた雑談は盛り上がりを増す。 というか、集まった理由がよくわからない。 「さて、そろそろ煮えたかな・・・あ、そだ。タカさん最近はどう?」 「うん。なんか雑誌の取材が来てさ、そのせいでちょっとコミ気味。 一時のことだとは思うんだけどね・・・・あ、野菜そろそろいいよ」 「今日は?・・・・・・ん。春菊頂戴」 「定休日だろう?・・・・・しいたけ美味いな」 「そんなデータもあるの?乾って暇だね・・・・タレとってー」 「ほら・・・・専属の相手がいなくなったから時間を持て余しているんだろう」 「そんなことないぞ。俺の愛を見くびるなよ」 「みくびらない、みくびらない」 「っていうか今日は中学あるよね?」 「あぁ。だから乾がこれに参加してるんじゃない」 「そおかぁ。かおっちゃん暇だったら乾がこんなものに付き合うわけにゃいもんね〜」 「其処まで不義理じゃないだろ」 「おまいらなんで本人の前でそういうこと言うかなぁ」 「そうだ手塚、後で中学冷やかしに行かない?」 「冷やかす?それでは邪魔になるだろう?」 「大体越前ぐらいしかあのときのレギュラーもう残っていないじゃない、10月だし」 「桃と海堂が素直に引退してるとは思えないにゃぁ」 「・・・・・同感」 「そっちにも活を入れるって事で」 「・・・・・・・・そうだな」 「乾、連絡した?」 「あぁ。海堂からレスも帰ってきたよ。向こうも準備OKだって」 「流石に毎回食べてるだけだとね」 「越前との試合なんて、手塚には結構いい誕生日プレゼントかもね」 「多分ね」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・すいません。
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