僕はまだ3歳です。
でも、一応中学3年生です。



電車一本分の・・・・・



「ふじぃ!ねぇ、誕生日何が良い?」
「んー?手塚がいいかなぁ」
「ほぉい。わかったぁ〜」
「って・・・英二?」

僕の親友は時折冗談が通じません。
3歳の僕よりもずっと子供っぽいくせに
その実行力たるや、大人顔負けも手伝っていて。
とにもかくにも。
嵐に止めろと聞き取れる耳が着いているはずもなく。

「ごめんな。英二が変に張り切っちゃって」
「んー。それは構わないんだけれど。
心配なのは手塚かなぁ」
「はは、確かに。
まぁ手塚も英二につかまる程のへまはしないと思うけれど」
「まぁ、だいたい。今年はないんだけどね、僕の誕生日」

親友の恋人殿は当然のように代わりに謝ってくれて
頼んでもいないのにフォローを一つ。それから。

今年ないはずの誕生日プレゼントをくれました。
青い、スポーツタオルでした。
英二と2人で選んだんだけど。
胃痛持ちの同級生は、そう言って笑いました。

「4年に一度しかないということは、だ。つまり」
「つまり?」
「1年の内2月28日と3月1日の間の6時間(各3時間)は29日と認識して良いんじゃないか?」
「・・・・・・・・・なんでデータ屋の君がそんな屁理屈を?」
「しかしまぁ、4年に1日と1年に6時間と。
どうせ1日の3分の1は寝ているんだから丁度良いんじゃないか?」
「・・・・・・・・・それが誕生日プレゼント?」
「そう捕らえてくれて構わないぞ?」

それから一応、こいつも。
理屈屋の同級生からは、そんな会話と一緒に、僕の愛用のグリップテープを1ハコ貰いました。
一応中学の部活は引退しているというのに。
データマニアで後輩フェチの彼は、あくまで無表情に、無理矢理僕に未来を約束させたのです。
勿論。そんなものを貰わなくても、僕だって続けるのに。

「あんまりいいプレゼントが思いつかなくて・・・」
「んーん。嬉しいよ。ありがとう、タカさん」
「喜んでもらえると、俺も嬉しいよ」

日頃は凄く優しくて穏やかな同級生からは、図書券を2枚、もらしました。
参考書という時期でもなかったので
最近出て我慢していた、ハードカバーの本を1冊、買おうと思いました。


放課後。
とはいっても、もう3年生だから、昼間で終わりなんですけれど。
朝一番に声をかけてきた嵐が、再び僕を呼び止めました。
そういえば今日、授業で顔をみなかったけど?
首を傾げた僕に、英二は行き先の指定された1枚の切符を差し出しました。

「なに?」
「たんじょーびプレゼント」
「・・・・・・・・切符が?」
「そう。」
「なんで?」
「これで、手塚を迎えに行って」

どういうこと?って聞いたら。
凄く楽しそうにいけば分かるよ、といわれました。
とても楽しそうに。
それは悪戯っ子の目でした。

だから僕は。
素直に家とは逆の方向の改札をくぐって。


海岸に程近い駅で降りる為に電車にゆられました。


「手塚?」
「やっと来たか」
「・・・その言葉を解釈すると、学校サボってるって捕らえることになるんだけれど?」
「あぁ。菊丸に拉致られてな。財布も取られた」
「本当に取られた?」
「好きに解釈して構わん」

海岸線の高台には
半分予想通りで
半分予想外のヒトが海を見ていました。
声をかけると、此方に笑いかけます。
部活と生徒会長を引退してから眉間の皺が減ったそのヒトは
思ってもみないほど
茶目っ気のある目線で。

「じゃぁ帰ろうか?」
「帰るのか?」
「だって、そうでしょう?」
「折角ここまできたのにか?」
「・・・・・?」
「タオル。貰っただろう?」
「え?」
「風邪を引かん程度でな」

いって
僕の長い長い1年の間好きな人は
靴を脱いで
靴下を脱いで
ゆっくりと砂浜に歩き出しました

僕は一瞬呆気に取られましたが
つい。

靴を脱いで
靴下を脱いで

彼を追いました


終電までの時間
僕は今を

2月の29日だと勝手に決めることにしました。

END



------------------------------------------------

童話風に〜と思ったんですが・・・

手塚さん?
アナタ何者?っていうか偽者でごめんなさい。
さり気無く策士の菊。
そしてさり気無く白い不二・・・
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送